杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

自然水系に微生物資材を投入するというのはどういう事か

宮城県には毎年冬になると白鳥が飛来し、ラムサール条約にも登録されている伊豆沼という湖があります。
この湖も年々水質の悪化が進み、また外来種ブラックバスが増えたりと様々な環境問題を抱えており、宮城県では平成20年に「伊豆沼・内沼自然再生協議会」を設立し、伊豆沼の再生に向けての取り組みを始めています。

近年、河川にEMという微生物資材を投入する環境活動が各地で行われる様になり、この伊豆沼でもEM使用についての件が検討されました。
検討結果は結局、県としてはEMは「不採用」という結論となりましたが、その時の資料が以下のページで公開されていますので、ここで改めて紹介したいと思います。

宮城県HP」より「伊豆沼・内沼自然再生協議会」ページ中の
・配布資料
「資料1 第6回伊豆沼・内沼自然再生協議会の意見への対応について」(PDF)
のp.2より抜粋(尚、強調は引用者によります)。

【項目】
伊豆沼・内沼でのEM菌の使用について
【意見等】
○ 伊豆沼・内沼でEM菌の使用を検討したらどうか。EM菌がどこで開発されているかなど調査してはどうか。
【意見等への対応方針】
○ 他自治体で行っているEM菌等の微生物資材に関する取り組みや研究などについて,HPや聞き取りで調査を行った。
 福島県環境センターでは,市販の微生物資材3種類をメーカーの指定方法に準じ米の磨ぎ汁などで希釈し,7日間培養し成分を測定した結果,いずれも酸性が強く,BODは合併浄化槽放流水の210~590倍,窒素は4~12倍,リンは2~32倍の数値を示した。そのため福島県は,微生物資材の培養液そのものが高濃度の有機質で水を汚すことになるため,河川などへの投入は慎まなければならないとの見解を示している。
 このような研究は過去に岡山県広島県でも行われており,その結果はいずれもEM菌による明確な効果を確認することができなかったというものである。
 EM菌が水質改善などに効果があるということが公の研究機関などで立証され一般的に認められているのであれば,伊豆沼・内沼でも効果があるかどうか実験することは考えられるが,EM菌自体の効果を県が行う自然再生事業により検証する必要はないと考えている。

この結論だけ見れば、EM投入活動をしている人達にはにべもない冷たい解答の様にも思われるでしょうが、実はこの資料の後半部(p.8~11)には、微生物資材投入に対する極めて重要な提言が付与されています。
それは「福島県生活環境部 生活排水対策推進指導員講習会資料」というもので、ここには「EMは河川の汚濁源」とした福島県環境センターのその時の実験データと、「微生物資材の水環境中での利用に関するQ&A」というものが付随しています。
この資料は以前Zutto_3のブログでも紹介されていましたが、この程サイエンスライターの片瀬久美子さんも自ブログで紹介されました。
極めて重要な提言であり、多くの人に知らせたい内容でもありますので、私の所でも改めて紹介させてもらう事に致します。

業者の宣伝文句を鵜呑みにし、自然水系中に微生物資材を無頓着に投入する活動が未だ多く続けられていますが、この「Q&A」はその事の意味やその危険性などを分かりやすく解説しているもので、環境運動をしている人ばかりでなく、先生や生徒・PTA・教育委員会など、ぜひ多くの学校関係の方々に見てもらいたいと願うものです。

 
 
 
 
 
 

“どんな物でも使い方によってプラスにもマイナスにもなることはご承知のことと思いますが、微生物資材も同じで、万能ではないことを理解する必要があります。”



(7月13日追記)
片瀬さんが新たなエントリーをアップしました。
日本全国で行われているEMだんご投入の実情を知る事が出来ます。こちらもぜひ。
(warblerの日記より)「ちょっと待って!EM団子・EM活性液の投入

関連エントリー