11月3日、福島県須賀川市に特撮資料を収集保存する「須賀川特撮アーカイブセンター」がオープンし、この模様は地元新聞やGigazineなどでも大きく紹介されました。
これは特撮ファンなら見ずばなるまい!
そう思い、よく晴れた週末の朝早く、高速を飛ばして行ってきました。
施設は出来たばかりでまだカーナビ情報には登録されてないので、場所は先のGigazine記事にあった地図を参考にし、東北自動車道郡山南ICを降りて県道55号線を15分ほど走ると、一面の田んぼの中にその施設はありました。
ただ入り口の看板が小さいので見落としには要注意、僕は一度通り過ぎてしまいました。
ストリートビューで見てみると、以前ここは「須賀川市岩瀬支所」という場所で、アーカイブセンターはここの建物を改築したのですね。
(グーグルストリートビューより)
着いた時は朝10時前で車はまだ少なかったのですが、ここが満車になるのはそう長くかからなかったみたいです。
側面に回って入り口へ。
受付では検温・アルコール消毒後名簿に氏名を記入し、入場券を預かって中へ入ります(入場無料が素晴らしい!)。
館内についてはこれもGigazineで紹介されてましたので、まずはこちらから読んでもらった方が良いかもです。↓
入ってみると、壁の寄せ書きは記事よりも増えていました。
ロビーでは「シン・ウルトラマン」のお出迎え。
天井には飛行機のモデルが多数、すべて撮影に使用されたものらしいです。
一式陸攻と言えば「山本五十六」ですが、モデルの出来から見るとどうやら2011年の東映作品のものみたいですね。
収蔵室入り口には収蔵品のリーフレットが用意されてますが、これがまた…。
細かい事この上なく、老眼の身にはつらいものでした(苦笑)。
(表面)
(裏面)
よく見るとこれ、イラスト・文は樋口真嗣氏本人が書いているのですね。
収蔵品リストはさらに細かく、これでもかという小さなフォントで思いっきり詰め込まれていたのでここで見るのは諦め、帰宅後にじっくり見る事としました。
収蔵庫に入ると壁際には科特隊本部の透視図が。こうなってたのか!
収蔵庫には円谷特撮ではお馴染みのメカの数々、思わず熱くなります。
轟天号の3尺モデルも。まだ本物が残っていたのですね。
円谷英二最後の特撮映画「日本海大海戦」の戦艦三笠の勇姿、でかい。
船体は木製、職人の手作りの技を見せるため、敢えて外壁を剥がした状態で保存されてます。
映画公開時、少年サンデー(だったと思う)の巻頭カラー特集に載ったイラストページのパネルもあります。懐かしい!
東宝特撮プールでの撮影風景、寒天の海や波止場で輸送船を見送る人々は紙の切り抜き人形であるなど、メイキングを見て撮影の裏側を知るのは子供心にも楽しいものでした。
隣には巨大な戦艦大和が。
資料によるとこれは「男たちの大和」に使用された1/35モデルだそうで、手すりや階段、3連装機銃の台座周辺の作り込みなど実に細かく出来てます。
昔、東宝映画「連合艦隊」(1981年)の公開時、撮影に使用された10m級モデルが「船の科学館」で野外展示されていたのを見ましたが、その時は正直1/700スケールモデルをそのまま大きくしただけの様な甘いモールドでがっかりした覚えがあります。
本編映像では水面の波のスケールとも相まって10mもの巨大さがまるで感じられなかったのですが、その理由があのモデルを見て分かりました。
その時はそれよりも、船の科学館に飾られていた大和の精密モデルの方に思わず目を奪われてしまったのですが、今目の前にある大和はそれを凌駕する程のクォリティで、モデリングテクニック自体も昭和の時代からは隔世の感があります。
その後方にはさらに大きく細密な1/12.5スケールの大和の艦橋がどぉ~んと。
これは本編実写部分との合成で使用されたものなのでしょうね(多分)。
モデリング技術の進化ももちろんですが、特撮の歴史の中では何よりもデジタル合成技術の進歩が大きかったとつくづく感じます。
そしてお隣には「巨神兵東京に現る」で使用された巨神兵のモデル。
文楽人形の様に3人で操る事は知ってましたが、実物を見るとこれもまた各所に作り手の拘りが感じられますね。
背面の壁側には、特撮スタッフを紹介するパネルが数多く掛けられています。
2階への階段の踊り場ガラスにもその姿。
こういう所に特撮を支えるスタッフへの敬意を感じます。
そして隣には「モスラ」のセットに立つ円谷監督のお姿。
2階展示室に入ると存在感ある大きな建物のモデルが。
これはNHK大河ドラマ「いだてん」で使用された「帝国製麻ビルヂング」の1/18スケールのモデルだそうで、その時の撮影風景がパネルで紹介されています。
細部の作り込みや石造りの壁の表現などよく出来ています。
アップで見ると本物みたい。見事です。
このモデルは画面に映る側だけのセットで、後ろ側には昭和35年当時の東海銀行や日本橋三越本店のモデルも展示されてますが、雑居ビルの看板にも職人の拘りを感じますね(ダンってこれね)。
こうした様々なモデルによってあの昭和の風景が出来上がったと思うと、こういう目で改めて録画していた「いだてん」を見直してみようかと思います。
隣のスペースには街並みのセット、手前にはこれも良くできた一軒家のモデル。
よくよく見るとこれ、どうやら「巨神兵東京に現る」で使用されたものみたいですね(多分)。
街のジオラマは奥の方が徐々に小さくなって広がりを表していて、手前の所定の位置からスマホを構えるとベストアングルで撮影出来る様になってます。
多くの人が向こう側に立ち、自ら怪獣となって記念撮影をしていました。
2階視聴覚室では「巨神兵東京に現る」とそのメイキング「巨神兵が東京に現れるまで」が1時間おきに上映されていますが、これでもかという職人の拘りが詰まったメイキングはやっぱり面白いですね。
いずれは古の作品の秘蔵メイキングなど発掘し、特集を組んで上映してくれるのを期待します。
2階からはホールを見下ろせます。
このアングルから戦闘機のモデルを見て気付きましたが、これ、「俺は、君のためにこそ死ににいく」に登場した隼3型だったのですね。
この映画でのミニチュアモデル操演による特撮は非常に良い出来で、ミニチュアも原寸スケールのモデルも双方良く出来ていて見応えあるものでした。
(原寸モデルはこれ、↓ 製作はこちら)
夢中になって見ていると時を過ぎるのがあっという間で、2時間弱の見学を終えて外に出てみると、入り口には入場を待つ多くの見学者の姿がありました。
館内が意外と空いてると思ったのは、コロナ対策で入場制限していたからなのですね。ここを訪れる時は出来るだけ早い時間がお薦めです(開館は9時から、毎週火曜日が定休日)。
帰り際に受付にある須賀川市の観光ガイドを貰ってきました。
ウルトラガイドマップには、市内にあるウルトラ怪獣モニュメントのガイドが載ってます。
須賀川市には「市民交流センターtette」内に「円谷英二ミュージアム」もあります。
残念ながらミュージアム内は撮影禁止となっていますが、唯一このゴジラだけは撮影OKとなっています。
(写真は昨年訪れた時のもの)
館内の特撮スタジオには、アーカイブセンターのパネルにあった「日本海大海戦」の撮影風景のジオラマが展示されていて、アーカイブセンターで実物を見た後にそれを見るとまた実感が沸くかと思います(写真撮影出来ないのが本当に残念!)。
帰宅後に収蔵品リストをじっくりと見てみると、後方の棚には「宇宙からのメッセージ」に登場したガバナス帝国戦闘機のパーツもあったりと、その時は気付かずに見落としていたモデルやパーツがたくさんあったのを知りました。
ヒーローマスクでも、ウルトラセブンと一緒にシルバー仮面が展示されてたりと、ここには東宝や円谷プロだけに限定しない、広く日本の特撮関連資料がアーカイブされています。
今後はぜひとも大映や松竹とか山崎貴監督作品とか、映画会社や製作プロダクションの垣根を超えた資料もどんどん取り揃えてほしいですね。
そして時々は収蔵品の展示スペースを入れ替えて、奥にある貴重な資料ももっと見やすく展示してもらえたらと思います。
あとやっぱりこのリストは、いくら何でもちょっと細か過ぎですねw。
出来れば有料でも、収蔵品の写真付きガイドブックが欲しかった所です。
資金的な問題などはクラウドファンディングででも募集すればすぐに集まると思うし、館内で販売すれば結構売れるのではないかと思うのですが(少なくとも僕は買います)。
これからはぜひとも、物だけではなく昔のメイキング映像などのソフト関連資料も取りり揃え、特撮の魅力を発信する一大拠点に育って欲しいと願うものです。
あ~~~! 舞い上がっててクリアファイル買うのコロッと忘れてた!
まあいずれまた行くからいいかぁ~w。