杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

B&P2013合同大会に参加する

9月27~30日の4日間、仙台市東北大学農学部雨宮キャンパスで「2013年 日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会(略称B&P2013)」が開催されました。
以前のブログエントリーで知り合いました飯島明子さんのお誘いもあり、28・29日の両日私も参加してきました。
学会参加というのは初めてで、一体どの様な内容なのか興味深々でした。

当日は雲一つない秋晴れ、大学正門前にはこのような看板が。ここを訪れるのは初めてです。


受付では参加者にもれなく大会パンフレットが配られます(言い忘れましたが、参加費は5000円でした)。
パンフレットと言っても中身は当日発表167グループのすべての講演要旨が網羅されており、ページ総数185ページというボリュームです。
  

会場に到着したら、早速飯島明子さんにご挨拶。飯島さんは今回はパネル発表という形で、EM問題を研究者達に訴える旨をご説明下さり、私の方からも参考にと用意したEM資料をお渡ししました。
飯島さんが用意していたパネルはこの様な形のもので(クリックで拡大)、


そこにはEMの何が問題なのかが一目で分かるように列挙され、後ほどこれに飯島さんが説明・解説を加える訳です。
よく見ると私の意見も紹介されており、大変恐縮致しました。
  

ポスター発表は午後からなので、その間興味がありそうな講演を聴いてみる事にします。
会場はこんな具合で、一人の持ち時間が僅か15分という短さで、皆駆け足で次々と発表していくため、それほど単調な感じではなくあっという間に時間が過ぎていきます。


ポスター発表の時間が近づいてくると、徐々に会場に人が集まってきます。




午後1時からポスター発表が始まり、各会場ではパネルの前で説明する声があちこちから沸き起こります。


奮闘する飯島さんのお背中が素敵です。


これ以降はまた会場で主にベントス学会の講演を聞く事になりますが、大学・企業・研究所と様々なジャンルからの発表が続くので、聞いてて飽きません。




中には個人で行っている研究も登場し、これが中々に面白く、帰宅後思わずネットを調べてしまいました(「ハマハマ通信」、残念ながら現在は繋がらなくなっています)。



1日目はこれにて終了し、こちらも楽しみにしていたライブ見学へ、そして2日目へと続きます。
2日目の注目発表は何と言っても「有明海」問題、午後からはこの演目が集中的に続く事になります。
そして講演を聞けば聞くほど、諫早湾の水門閉鎖が有明海全体にとっていかに問題であるかが理解出来、それが自然科学の立場から次々と証明されていく様は圧巻でもありました。
紹介画面は熊本保険科学大学、高橋徹教授の発表より。諫早湾問題の概略の解説です。
 



こちらの発表では、底生生物層の変化によって環境の変化に迫ります。




そして最後の講演、長年諫早湾問題に取り組んでいる東幹夫さんの発表。




様々な角度から行った経年変化のデータにより、諫早湾内湾の調整池の環境が、更に悪化している現状が報告されます。



今回の講演を聞くにつけ、私にはどうしても以前書いたエントリーを思い出さずにはおれませんでした。
諫早湾の調整池の環境悪化は、科学の立場からはすでに結論が出ています。
その事はこちらで大変分かりやすく述べられていますが、今回の発表では、その理論的根拠となる具体的な数値データが次々と明らかになりました。

しかし現在、これはもう科学問題から離れ、漁業従事者・農業従事者・行政などが入り乱れる「政治問題」となっています。
この政治問題というのは、つまりそれに関わる「人」の問題であると言えます。
そしてこの「人」の部分に、EMは草の根から擦り寄ってくる訳です。
EMサイトではかねてよりこの様な宣伝が行われており、地元にEMを利用する人がいたらすかさずEMユーザー宛に情報を発信するという広報を行っています(→参考PDF)。
しかしこの様な活動に対し、残念ながらこれまで専門家の方達はほとんど目を向けていませんでした。

今回会場で数人の方とお話しましたが、EMの事をまるで知らないか、知っている人は鼻から無視しているという状況である事が改めて確認されました。
科学の立場から見た時、それは明らかに違うとか宗教・カルトであると語るのはたやすいですが、しかし現実に、この社会を動かしているのは「人」の営みであり、科学はそれを手助けする一手段(道具)に過ぎないとも言えます。
「人」が行動を起こす根本の動機は「感情」です。
その「感情」に、まるで寄り添うかの様に擦り寄ってくるのが「ニセ科学」であり「カルト」であり、それは程度の差こそあれ、その構造は同じなのです。
そして一番恐れるのは、周りが無視をしている間にいつの間にか懐に忍び込み、気がついた時にはもう手遅れになっているという事です。

今回の飯島明子さんの発表は、その意味でも学会員に対して問題意識を喚起させるという事で、大変有意義なものであると感じます。
私個人も、EM問題をご存知なかった専門家の方に説明する機会を与えてもらい、この大会に参加した甲斐があったと思います。

奇しくもこの学会が行われている最中に、諫早湾に関するこんなニュースが流れました。
と同時にこんな記事も見つけてしまい、どちらも決して無視出来ない現在進行中の事案であり、そして「人」の問題であるという事を、改めて実感した次第です。
諫早湾干拓事業:開門対策工事、着手再び見送り 住民側、話し合い拒否 農政局側、解決策見いだせず /長崎
毎日新聞 2013年09月28日 地方版

 九州農政局は27日、諫早湾干拓事業の開門調査に向けた事前対策工事の着手を9日に次いで見送った。農政局側は、話し合いの場を持つことを再三提案したが、開門反対派の住民側は拒否し、解決策は見いだせていない。

 諫早市長田地区と小江干拓の2カ所の工事予定地に住民ら計約600人が集まった。「開門反対」の鉢巻きを締め、のぼりや横断幕を手に「帰れ!」「開門反対!」などとシュプレヒコールを繰り返した。長田地区で抗議した地元の町内会長、松浦正一郎さんは「絶対反対の姿勢は変わらない。国は開門を義務というが、こちらも土地を守らなくてはいけない」。雲仙市の農業、池田進さんは「国が進めてきた事業を、国が駄目にしようとしている。誰が考えてもおかしい」と批判した。

 小江干拓で抗議した小長井町漁協の新宮隆喜組合長は「中身は前回と変わっていない。開門しないこと以外に解決策はない」。諫早市議会の村川喜信議長も「何度来ようと(阻止活動を)やるのみ」と話した。

 また、中村法道知事は同日の定例記者会見で「国が再度、地元の理解を得られないまま工事に着手しようとし、地元に混乱を生じたことは、たいへん遺憾だ。地元無視というだけでなく、国に対する地元の信頼を根底から損なう」と批判した。【小畑英介、武内靖広、大場伸也】

〔長崎版〕



(参考)
togetterより:「有明海・諫早湾・環境問題のまとめ」