杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

EMへの疑問(12) ~ちゃんと検証しているの?(追補)~ (追記あり)

平成13年3月の四日市市議会3月定例会の中で質疑に登場した、三重県によるEM実証試験の結果が平成15年3月に公開されています。

三重県では,平成13年(2001年)8月2日から翌14年(2002年)8月29日までの約1年間、英虞湾内の神明干潟と片田養殖場でEM投入試験を行いました。
EM投入量は、神明干潟でEM活性液が106トン、EMセラミックス106㎏、その投入回数は各々2トン×53回、2㎏×53回にも及びます。
片田養殖漁場では、EM活性液が530トン、EMセラミックス240㎏、投入回数はEM活性液10トン×53回、EMセラミックス200㎏1回、10㎏4回というものです。
実験にかかった費用は、平成13年度138万9,640円、平成14年度397万6,000円、合計で536万5,640円にも及ぶかなり本格的な実証試験でした。
注目すべきは、この試験では実験地の選定、実験方法にあたり、比嘉照夫氏本人と「㈱EM研究機構」、「㈱イーエム総合ネット」とが共に検討を行った事、活性液の調整と投入・散布は「㈱EM研究機構」が担当したという事です。
その調査結果は下記で見る事ができます。

特定プロジェクト研究事業:「閉鎖性内湾漁場の環境改善対策調査研究事業」:研究報告書
(2013年6月25日追記:上記リンクが切れていますので、新たにこちら→(PDF)をリンクしておきます)

気になる検証結果ですが、神明干潟では、
    「1年間の短期間で化学的な指標の追跡により、EM活性液による干潟底泥の
    改善効果を判断することは難しいと考えられた。
    また、底生生物も前記した複雑な環境要因に左右されるものと考えられ、今回
    の結果でEM活性液による影響を判断することは難しいと考えられる。」
との結論となり、片田養殖漁場でも、
    「養殖漁場においても干潟と同様に現時点で、化学的な指標の追跡により、EM
    活性液による養殖漁場底泥の改善効果を判断することは難しいと考えられる。
    また、底生生物の調査結果についても同様と考えられる。」
となっており、最後に
    「今回の実証実験においても気象をはじめとしたさまざまな外的要因の影響により
    1年間の短期間のデータで現象の変化を正確に把握し評価することが困難であっ
    た。」
としています。
つまりEMによる環境改善効果はあったのかなかったのかと言えば
「よう分からん」
という事であり、ひいき目に見たとしても、
「あったとしてもEMの効果より外部環境の影響の方が遥かに大きい」
と言えるような結果でした。
逆の見方をすれば、たかだか2~3ヶ月で顕著な効果などは現れるべくもないとも言える訳です。

実際、中を詳しく見てみますと、実験が始まった年の平成13年9月10日に台風15号が上陸しており、また10月10日には集中豪雨に襲われ、その直後のデータではそれまでのとは顕著な違いが現れています。
特に目視の項目では、汚泥に埋まっていたカキ殻が、台風や集中豪雨後に露出が目立ったと報告されています(こちらのp.5の③)。
どこかで聞いた事ありますね。

さらにこちらの報告ではもっと興味深い考察が述べられています。
報告書p.61の〔まとめ〕を紹介します。
4 まとめ
海域底質中の細菌の群集構造について、PCR-DGGE 法を利用しバンドパターンから検討した。その結果、EM活性液中の細菌に相当するバンドが室内実験及び実証実験フィールド試料の底質から確認されなかった。このことから、添加したEM 活性液中の細菌は、優占種としてこれら両底質に定着していない可能性が高いと考えられる。

  (参考)PCR-DGGE法について
  微生物群集解析のための分子生物学的手法。土壌・底質など種々のサンプルから直接DNA を
  抽出し、これらをPCR(Polymerase Chain Reaction)により増幅後、濃度勾配のついた精密な電
  気泳動法(DGGE 法:変成ゲル濃度勾配電気泳動法)で細菌の種ごとに分離してバンドパターン
  として見ることができる。微生物を培養して調べるのではなく直接DNA を抽出して解析するので、
  培養不可能な微生物についても検出ができ、その存在を知ることができる。


  ちゃんと検証してみたら、こんな結果になったとさ!
(終わり) 


(2010年5月30日 追記)
引用した論文が非公開となり、リンク先がすべて not found となってしまいました。
それでも一応内容はお分かりになれるかと思いますが、どうしても詳しい内容が知りたい方はこちらに申し込めば手に入れる事が出来ます(但し有料)。
まあ、抄録を読んでいただくだけでも結構ですけどね。

(2013年6月25日 追記)
本文中に「閉鎖性内湾漁場の環境改善対策調査」の新たなリンクを追加しました。