杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

一記者の思い込みによる扇動記事の実例をまた見てしまう

朝日新聞の「吉田調書」捏造記事事件が大きな反響を呼びましたが、こうしたマスコミによる事実の捻じ曲げ報道は何も朝日新聞に限った事ではありません。
震災後、特に原発事故に関しては、一人の記者の思い込みによる偏見記事や煽り報道などをいやというほど目にしてきました。
そして人々の不安を増幅させ誤った認識を抱かせるこの様な手法は、実は我々の身近な話題の中でも昔からずっと行われていました。

今回、以前からmixi内で情報を発信し続けているベレッタさんが、食に関してかなり問題と思われる事案を報告されており、私自身これはもっと広く読まれるべきと判断しましたので、ご本人承諾の上、私のブログに記事を転載させていただきました(尚、体裁やリンクなどはこちらで調整させていただきました)。
 (以下引用開始 ↓)
「ベレッタの斜め45度視点!」より
『著者の意図を無視して「フードファディズム」そのものの記事を書く「リテラ」とかいうメディア』

これはひどい・・・

私この本読んだことあるんですが、この記事自体が、作者の高橋久仁子氏が指摘するフードファディズムそのものです。
この本を読んで、どうやったらこんな記事が書けるのか 。
このメディアとライターの「リテラシー」というか、「常識」は何処にあるのだろう 。

「ポテトチップスやフライドポテトの発ガンリスクはなぜ報道されないのか」(→こちら

「本と雑誌の知を再発見」
とか謳うくせに、著者や著書の意図がさっぱり読み取れない上に、記事の最後は「陰謀論」と「フードファディズム」そのものです。

高橋久仁子氏は、ポテトを高温調理するだけで発がん性リスクのある物質が出来るのに、やれ「食品添加物」や「加工食品」のリスクばかりを言う、「バランス感覚の欠如」や 、食品について「~は危険だ」「~は毒だ」また「~は健康に良い」「~はスーパーフード」と過度に持ち上げたり、貶めたりするような、おかしな風潮を「フードファディズム」だと指摘しているのです。
その一例として「ポテトのアクリルアミドはみんな騒いでないよね?(他のことでは騒ぐのに)」という話を挙げているのです。

高橋久仁子氏は著書を読んで頂ければ判るのですが「ポテトチップス有害情報」を伝えている訳ではありません。

「ふつうの食品をふつうに加熱調理して有毒物質が生成してしまうという事実は、正直の ところショックです。ポテトチップスやフライドポテトはもう食べない、と決めるのも一つの選択ですが、たまに食べることまで怖がることもないでしょう。た だし、ポテトチップスの袋を抱えていつも食べているような人は、これをきっかけに自分の食生活を見直してください」(同書より)

という様に、要約すると「バランス感覚が大事だよ」という事です。

 ある日、あなたが思いもよらないガンになる。その原因はひょっとしたら、軽い気持ちで食べていたポテトチップスやフライドポテトかもしれない。

なんて煽り方は、それこそ高橋久仁子が糾弾している「フードファディズム」そものもですよね。高橋氏は「たまにたべるぐらいは怖がることもない」と書いてますから。

しかもこのライター

 ポテトチップスやフライドポテトといえば、大手外食チェーンや大手食品メーカーにとって欠かせないドル箱商品。こうした企業はマスコミにとって、大スポンサー様であり、大々的な報道を控える自主規制が行われたことが容易に推測できる。

妄想というか、陰謀論全開wwwww

「容易に推測できる」(お前の中ではな)

あのね、高橋氏は「ラジオやテレビはその日の夜のニュースで、一部の新聞が翌一一月一日にこのことを報じました」って書いてるでしょ 。
そんな自主規制が実際にあるのなら、最初からテレビや新聞で報道しないって・・・(笑)
この方の脳内では「報道が企業に慮って自主規制した」ということでないと、困るみたいです。

高橋氏は別に「報道が少ないのはおかしい」なんてことを言いたいんじゃ無いんですよ。
この「河内保雅」なるライター、他の記事を見ると

ナゲットだけでない! コンビニの弁当、ホットスナックに潜む恐怖(→こちら

こんなこと書いてる人です 。
はい、高橋氏や私が「フードファディズムだ」と指摘する事柄そのものでしょ?これ 。
なのに抜け抜けと、

「食べ物神話の落とし穴 巷に蔓延るフードファディズム

という著書を下敷きにするという、もう絶対にこのライター、この本読んでないわ、いや、内容が理解できなかったのか?ポテトのアクリルアミドの部分しか読んでないのだろう。実際に読んだ私にはそうとしか思えない。

「食品のリスク」について、例えば食品添加物や農薬のリスクを過剰に言い立てたりするのに、例えば天然の発がん性物質や、魚の水銀、調理過程で発 生するアクリルアミドの様なリスクはあまり指弾されないよね?実際にどれぐらい危険かで判断するべきで、「人工」とか「自然」とかで判断するのはおかしい よね?

というお話です。

きちんと「どれくらいのリスクか」を「正しく理解して」いただきたいというのが、高橋の著書からも読み取れるし、私も同じ考えです。

私は例えば「ワラビに発がん性物質が含まれるから食べるな」とか「マグロには水銀が多いから食べるな」と言いたいんじゃないんですよ。
実際に含まれるのは事実だけど、ごく普通に一般人が摂食する分には問題ないというお話。妊婦などのリスク群は別問題だし、「毎日100gアク抜きをせずにワラビを食べるぜ」なんて特殊な摂食行動は「おかしい」と言います。

こうした天然のものに普通に含まれている成分や、調理加工で発生する成分のリスクは「あまりよくわからない」というのが本当のところです。
調べないし、調べることがかなり難しいものだからです。また調べても何の得にもならないからという理由もあります。

「健康に良い」とかいう天然成分は、とことん調べて公表して商品化されますが 、「普通に食べてる果物や野菜のフラノクマリンによる光過敏症のリスク」なんてあまり調べても誰も得しないって分かりますよね。
逆に食品添加物なんかは、安全性についてかなり調べられて、基準が設けられるわけです。

リスクを詳しく調べられているものは、そりゃ「リスク情報」も豊富になりますし、それを見てみんな怖がるんでしょ、ラットの餌に食品添加物に使われる量よりものすごい量を入れて、「発がん性が」とか言われても、「そんなに食えるか」、みたいな話が実際は多いです。
逆に、天然に存在する成分のリスクって、急性毒はまだしも、「発がん性」なんてものは未知数のものが多いです。規制値は無いし、野放しだし、どの食品に含まれてるか書いてないし解らないんですよね。

最近指摘された、かつおぶしに含まれる発がん性物質ベンゾピレン」とか、これは燻煙過程で発生するのですが、今話題の「ココナッツオイル」に多く含まれていることを、多分、大抵の方は知らないと思います。

「ココナッツオイルはスーパーフード」とかいう話が「おいちょっと待てベンゾピレンは?」と

「特定の食品が素晴らしく健康に良い」と言うために、「そういう情報や研究だけ」を紹介して持ちあげるといういい例だと思います。
「ココナッツオイルに発がん性物質ベンゾピレンが」という話を聞いたら、みんな使うの止めたりして
まぁこれも「フードファディズム」なんですよ

私の言いたいことは、もうお分かりだと思いますが
ココナッツオイルはスーパーフードでもなければ危険な食品でもない、普通に食生活に取り入れても良い食品です、でも「油を全てココナッツオイルにして何でもココナッツオイルをかけて食べる」なんてことをすると、ベンゾピレンの発がん性が無視できなくなるかもしれないよね?
ということです。
食品のリスクやメリットなんてこんなものです、「幅広く色々なものを偏らずに食べることが、負担が少なく、リスク回避になる」と私は色々なところで言っています。

というわけで、このライターがなぜよりによってこの本を枕にしたのか、本当に謎なんですが

「食べ物神話の落とし穴 巷に蔓延るフードファディズム

オススメの書籍です。

(補足)

すっかりアクリルアミドの話をするのを失念していました・・・

食品中のアクリルアミド分析値 (→こちら
食品中のアクリルアミドができる仕組み(→こちら

資料を見ていただくほうが早いですね。
高温調理でも唐揚げや焼き魚には少ないですが、これは調理の火の通り方の違いです。
内部まで高温に曝される調理をする、例えば薄切りのポテトチップスの様なものだと、アクリルアミドは多く発生します。
唐揚げや焼き魚は内部までカラッと高温にならないので、発生していても表面だけで微量となります。肉や魚にもアスパラギンは含まれますので、発生しない原因は糖が少ないことと、実際に曝される温度の違いです。

「食品中のアクリルアミド分析値」の「かりんとう」の項目を見て頂くと解りますが
「2度揚げ」したかりんとうのアクリルアミド、めっちゃ多いですよね、中までカリッと高温に曝されるからです。そしてドーナツには少ない、ドーナツを中までカリッと揚げる人は居ませんからね、普通。
2度揚げによって表面だけでなく内部までしっかり高温に晒されたから、こうなるわけです。

調理温度と相手の形状や性質で発生量が全然違います。ポテトを細く切って揚げたのと、太く切って揚げたのとでは、アクリルアミドの発生量が全然違うということです。
気になる人は、食品の成分より調理法を考えたほうが良さそうですね。

ただ、「火を使って調理」したときから、人間はある程度アクリルアミドを摂取し続けているわけで、特定の食品に多いからといって、いきなり避ける 必要があるのか疑問ですし、ポテトチップスやフライドポテトをあまり食べない日本人のがん発症率や死亡率が、欧米より特段低いわけでもありません。その程度のものです。
 (引用終わり ↑)

断片化された情報が、一個人の思い込みによって変質していく姿がここにあります。
またこれが思い込みなどではなくもし分かっていて行われたのだとしたら、これこそ作者の信用を失墜させるほどの悪質極まりない行為だとも言えます。
読者の方はくれぐれもこの様な書評に惑わされる事なく、ご自身の目でじっくりと確かめていただきたいと願うものです。



※ 引用を快諾して下さったベレッタさんに心より御礼申し上げます(ベレッタさんの表ブログはこちらです。)



(参考)
フードファディズム:食と健康は密接に関わるが、その関わりを誤って考えることをフードファディズムという。
・〔食情報とフードファディズム〕(→PDF
・〔食品の放射能汚染とフードファディズム 「『普通』の食事、してますか?」〕(→こちら