杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

人事新報社に業務停止命令

前に何回か取り上げました「人事新報社」ですが、この度ようやくと言いますかやっとと言いますか、業務停止命令が下されました。
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  名ばかり「同窓名鑑」
  掲載、卒業生の1割未満  県など「誇大広告」
名ばかりの「同窓名鑑」を売りつけていたとして、大阪市の通信販売会社が18日、埼玉県など5都県から、3か月の業務停止命令を受けた。多くの同窓生が載った名簿であるかのようにうたっていたとして「誇大広告」と認定された。

県消費生活課によると、大阪市都島区の「人事新報社」は、名簿業者から入手した情報を基に、名前や職業などの記載欄を設けた販売広告の往復はがきを卒業生宅に送付し、個人情報を書き込ませ、名簿購入の申し込みを返信させていた。実際に平均価格1万1450円で販売されていた「同窓名鑑」に掲載された人数は、卒業生の1割にも満たなかったという。

同社の名簿に関しては1997年度以降、「学校や同窓会が発行する名簿と誤信し、申し込んでしまった」「卒業生の掲載者数が少なすぎる」といった相談が、県や各市町村に計197件寄せられていた。

同社の社長は「処分は厳粛に受け止めている。ただ、何をもって『誇大』なのか疑問がある」と話している。
   (2009年9月19日 読売新聞)
   (魚拓

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停止命令を出したのは、東京都千葉県埼玉県神奈川県、そして静岡県の1都4県です。
内容は皆同様のものですが、違反項目としては東京都の一覧が分かりやすく解説されています。

ところでこの「人事新報社」、今年一年(平成20年4月~21年3月)で何と3億6千万円もの売り上げを記録しています。
名簿の値段が一冊11000円前後ですから、全国で3万人ほどが被害にあってる事になります。まさに「薄く広く」ですね。
こうして見るとこの商売、かなり儲かるようですが実際収支などはどうなっているのでしょうか? 試しにちょっと計算してみました。

まず仮定としまして、一校当たりに1000人ほどをピックアップして往復ハガキを送り、その中の10%、100人から返信があったとします(実際、同窓会に出席する人数も、送った人数の一割ほどというのが相場でしょうから)。
そして100部を作成して送りつけ、その中の半分、50人から入金があったとします。
名簿については、記事中の写真や被害者の方の相談内容によりますと、厚さはせいぜい1cm程度との事なので、大体200ページ程と仮定しました。
(以下の単価は平均的な印刷代、製本は同人誌作成のサイトを参考にしました。)
そうしますとまず、
【DM代】
  往復はがき @100×1000枚=100,000円
  紙面印刷代 @57×1000枚=57,000円
  宛名印刷  @25×1000枚=25,000円
    小計               182,000円
  版下作成・送料など諸費用   15,000~18,000円
    合計             約200,000円(弱)
【名簿作成費】
  A4判 200頁 100部   約125,000~220,000円(仕様により上下あり)

  総制作費            約325,000~420,000円

  50人からの入金       50×11,000円=550,000円

  収支               215,000~130,000円のプラス(平均利益率30%以上!)

となりますね。 
平均して一校当り170,000円の利益として、同様にして300校に送った場合だと粗利は、
              170,000円×300=51,000,000円(!)
となる訳です。
印刷・製本なども自社で行った場合などは製造原価はもっと安く押さえられますから、そうなると利益はより大きくなる訳ですね。
実際売り上げは3億6千万円ですから、300校に送ったとして3万人が買ったという事は、やはり一校当り100人程の人が被害に遭った訳です。
ですから、送金金額100人とすると仮定の人数の2倍ですから、
             51,000,000円×2=102,000,000円(!)
実際は上記の仮定よりももっと大規模に行われたり、また粗利ももっと低いとも考えられますが、それでも年間1億近い利益を上げているのではないでしょうか。
またその分、多くの人が被害に遭っており、かなりの人達が泣き寝入りしているものと想像出来ます。

これが詐欺として立件出来ないのは、まがりなりにも同窓会名簿はちゃんと作成しており、一応名簿作成会社としての体裁は整えている訳です。
そして申込書により、あくまで本人が申し込んだものとして扱われる訳ですから、たとえ本人が勘違いしたとしても、ただそれだけとして扱われてしまっておしまいとなるのでしょうね。

今回業務停止命令の措置が取られたとはいえたった3ヶ月の期間ですから、ほとぼりが冷めたらまたあちこちに申し込みはがきが発送される事でしょう。
こういうのには【無視】が一番、皆さんくれぐれもご注意下さい。