杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

EMへの疑問(4) ~その効果はホントなの?(前編)~

前段階が長くなってしまいましたが、いよいよ今回からは各地で行われている「河川浄化活動」とEMの関わりについて考えてみたいと思います。

まずは初めとして、「日本橋川」の浄化活動を取り上げたいと思います。
実はここでは、本来別な記事を予定していてこれはもっと後の方にするつもりだったのですが、新たな動きがありましたので、急遽「日本橋川」に変更しました。

EMによる浄化活動は全国各地で行われていますが、その中で有名になったものの一つに「日本橋川」の浄化活動が挙げられます。
ここの特徴は何と言ってもそのスケールの大きさで、その設備はこちらでも詳しく紹介されています。
それではこれから、この活動の歩みを振り返って見てみる事にしましょう。

日本橋川というのは東京都心の中央区を流れる川で、JR中央線水道橋駅付近で神田川より分かれ、下流隅田川永代橋付近に流れ込み、そのまま東京湾に注ぐ全長4.8kmの一級河川です。
この川はそのすぐ先が海である事もあり、潮汐作用により流れが滞ったり時には逆流したりと、その地理的構造上どうしてもアオコやヘドロなどが堆積しやすい特徴を持っており、この川の浄化方法については現在様々な方策が検討されています(→参考PDF)。

EMによる浄化活動は、平成17年(2005年)7月24日、「名橋「日本橋」保存会」主催の清掃活動でEMせっけんが使用されたのをきっかけとして、11月22日の清掃時にEMだんごが投入され、ここから本格的なEMによる浄化活動が開始されました。
やがてEM活動を主体としたNPO日本橋川に清流をよみがえらせる会」が誕生し、その後NPO「地球環境・共生ネットワーク(以下「U-ネット」)」の協力の下、平成18年(2006年)12月11日、EM投入設備の完成により活性液の直接投入が始まり、現在に至ります。
この時は千代田区HPでも紹介されましたが、勿論EM関連NPOでも大きく取り上げられました(→こちら)。
しかしここで注意しておきたい事は、このEM投入というのは実は当初2年間の時限付きの実証試験であり、あくまでEMの効果を確認する「実験」としての意味合いが強いものでした。
このEM投入に関するやり取りが、平成19年(2007年)2月9日に開催された「日本橋川・亀島川流域連絡会 第4期第4回」で「U-ネット」を交えて行われていますが、そこの「U-ネット」の言い分を読んでみますと甚だ心もとない返答ばかりで、中での【行政委員】のツッコミも理解出来ようというものです。

その後この連絡会ではたびたび効果の報告もなされていますが、ここではあまり芳しくない状態が報告されています。
例えば平成19年7月13日「第4期第5回」では、
【都民委員】 色々な要因があって河口の部分では影響を受けて、水が右往左往してる感じがあって、それをどうきれいにしていくかという事が問われてくるのだろうなと思います。結局は流れのない所で水を浄化していくかと、EM菌活動もあるけど、何かまた違う考え方を導入しなければならないと感じています。

とか、また平成19年10月26日「第4期第6回」では、
【都民委員】 私の所属している名橋「日本橋」保存会が中心になっているEMですが、毎週流しこんでいます。日本橋のイベントの時も、何千個も川底に落とす為に団子状で落しました。きれいになったという人もいますが、合流の弊害で雨が降ったらすぐに濁ってしまうという繰り返しでどこまで効果があるのか。

【都民委員】 同時多点観測のグラフを見ると新三崎橋から茅場橋まで見るとほとんど溶存酸素がないです。鯉なら多少2時間くらいは陸上に上がっても生きていますから、なんとか逃げていく力があるかもしれませんが、小魚、えび、かに、等のレベルの水生生物はこれだとほとんど駄目だと思います。もう少し良いかと思っていましたが、ショックです。

などと悲観的な報告がなされています。
一方この頃世間では、この活動がマスコミにも好意的に取り上げられたり、議員さん達もこぞって見学にやってきてブログで紹介したりと、活動それ自体が広く知られるようになり、やがてEM活動のシンボルの様な扱いになっていきました。
2008年3月7日、EMサイトの中で比嘉さんは突如このようなコメントを寄せました(サイト中ほど「水質浄化におけるEMの効果に対する判定方法について」)。

>その結果、悪臭は数週間で消え、数ヶ月後には、底泥にゴカイや小魚などの種々の生物が確認されるようになりました。
 半年以上も経過すると、小中様々な魚群が現れ、ヘドロは消失し、ハゼが多数確認され、大腸菌をはじめ、水質浄化を示す生物指標が大幅に改善されています

しかし、ここの水質を計っているのは実はEM総合ネット(現在は「株式会社EM生活」)の人達なんですね(→参照、これとかこれ)。
そしてハゼ釣り大会なども行われてその様子がマスコミで取り上げられ、勿論EMサイトでも大きく取り扱われます(→2008年9月20日こちら)。
これを見ると、EMのおかげで随分水質は改善されたかのように思えてしまうのですが、ところが丁度同じ時期に開かれた連絡会(平成20年(2008年)9月18日「第5期第2回」)では、浄化活動をしている人から以下のような報告がなされているのです。

【都民委員】 EM団子は地元の住民の町会で買っているということで、沢山な事業をやっているわけではないです。 効果ですが、川は流れているものですから、難しいだろうというのが最初から見えていました。 地元の方々皆、子供達が川の環境に目を向けるのは良いだろうと思います。私たちが調査している水質だとか底質調査をする分にはデータの変動はあるのですけれど、 著しく改善したとか、そういうことはまだないです。

しかし、この翌月10月27日に「環境フォーラム よみがえれ!日本橋川」が日本橋三越劇場で開催されるのですが、そのパンフレット中で比嘉さんはこのような謝辞を掲載しています。
   

 【見た目にきれいな状況では大半がAAレベルであり、水泳も適という状況にある。】 !

そういえば3月7日の発言の中で、比嘉さんはこうも言っていました。

その成果は決定的となりましたので、今年(平成20年)の10月27日に日本橋三越劇場日本橋川浄化のフォーラムが開催されることになりました。

どうやらここで比嘉さんが【決定的】と言っているのは、この「AAレベルになった」という判断によるものだと思われるのですが、しかし彼は一体どこからこんなデータを持ってきたのでしょうか?
もしかしたら比嘉さんは、

身内からの報告しか見ていなかったのではないでしょうか?

そして2008年10月27日、銀座日本橋三越三越劇場にて、環境フォーラム「よみがえれ!日本橋川」が開催されました。
しかしその詳細はEM関連サイトでしか知る事が出来ません(→こちら)。
それを見る限りでは日本橋川は随分綺麗になっているような印象を受けますが、その中で「名橋「日本橋」保存会」事務局長の永森昭紀さんはこう言っています。

日本橋川は、雨が降るとオーバーフローした汚水が直接入ってくる場所が30か所もあって、以前は水が濁り、悪臭が消えませんでしたが、EM投入後はニオイが消えるのが早く、晴天が続くと泳いでも良いくらいに澄んだ川になります。全国のEM事例を見ても分かるように、日本橋川も必ずキレイになると確信しています

「泳いでも良いくらいに」というのはあくまで比喩であって、実際に泳げると言っている訳ではありません。
それに「キレイになると【確信しています】」というのは今後の希望であって、今現在がそうであるという訳では決してないのです。

ところが比嘉さんはこの後、パンフの謝辞と同じ文面をあちこちで言い回る事になるのです。
後編へ続く)