杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

微生物資材を試す

めっきり秋めいてきた今日この頃ですが、実は今年の夏、知り合いの人からとある微生物資材をいただきまして、それをひと夏ずっと試していました。
いただいた微生物資材はこの様なもので、濃い色の方は農業や家庭園芸用として用いるもの、薄い方はそれを家庭用に改良した「活性液」というものです。
  

蓋を開けるとつんとした臭い、どちらかと言うとバルサミコ酢の様なお酢の刺激臭が鼻をつきます。色が濃い農業用の方はきつい香りですが、家庭用の方は臭いはかなり抑えられています。
添付されていた資料によりますと、資材の主な成分は光合成細菌や乳酸菌、酵母菌などの菌を独自配合し、黒糖で発酵培養したとありました。

 【注】 EMではありません(笑)。

活性液の取り扱い説明書によりますと、その使用方法としては、
 ・排水口などの臭い消し
 ・室内の拭き掃除
 ・レンジ周りの油汚れ
 ・生ゴミの発酵
 ・家庭園芸
など、あくまで生活の場での使用を前提にしている様です。
以前自分で「MAIENZA(えひめAI)」を作って試した事もあり(→過去記事)、この様な微生物資材の使い方は一応経験がありましたので、それを元に今回は、主に家庭用に色々と試してみました。

この手の微生物資材の効果を一番実感できるのは何と言っても「臭い消し」でして、前日に残飯に軽く振り掛けておけば翌朝の残飯からの腐敗臭はかなり抑えられますが、あまりかけ過ぎると今度は資材そのものの臭いが残ったりして、その加減を見極めるのが微生物資材を使いこなすコツかと思います。
またMAIENZAの時もそうでしたが、この手の発酵系の活性液というものは、消臭と油汚れには効果がある(→参考)と実感していましたので、いただいた時は早速台所の油汚れに試してみました。
まずは資材を10倍程に希釈してスプレー容器に入れ、レンジ周りなどにスプレーしてみました。
そうしてしばらく置くと徐々に油脂分が浮いてくる感じで、それを乾いた布巾で拭いてみると、軽い油汚れならばそれだけで簡単に落とす事が出来ました。
またしばらく使ってみた所、今まではすぐ臭くなっていた雑巾があまり臭わなくなったというのが実感としてあります。

そこでこの夏は、今までずっと見て見ぬふりをしていた換気扇の掃除に思い切ってチャレンジしてみました。
まずは金網フィルターですが、使い捨ての布フィルターは定期的に換えてはいましたが、金網の方は最後に掃除を行ったのは確か2年程前の事で、この時は相当の油まみれとなっております。
  

前回掃除した時は重曹を使ってみてそれなりに効果がある事は確認しましたが、今回は微生物資材の威力を見極めるためのテストも兼ねてみました。
まずは金網に活性液の原液をスプレーし、途中活性液が乾きそうになったら時々スプレーするなどし、そうしてしばらくおいておきます。
  
  

1時間半ほど経って金網を持ち上げてみますと、結構な量の油分が流れ落ちており、残りも水洗いや軽いブラッシングで油は落ちていきます。
ただこれは油分が分解されたという訳ではなくて、油と金属とが分離したという状態で、ブラシの方に落ちた油が付いてしまうという状態になります。
  

また、網目に引っかかっているフィルターくずだけはどうしようもなく、これはこの後素直に中性洗剤を付けたブラシでこすり落とす事になりましたが、こびり付いたしつこい油汚れがこの微生物資材によってはがれやすくなったというのは確かに確認出来ました。
  

掃除に特化した微生物洗剤というものは何社かが発売していますが、使い方のコツとしては時間をかけるという事がどの資材にも共通して言える事です(→一例)。
微生物が汚れを分解するにはどうしても時間がかかるため、そこには中性洗剤の様な即効性は望めませんが、中には一晩ほど漬けておくと油分が分解されるという報告もあります。
今回は時間もなかったので後半は中性洗剤も併用しましたが、結果としてはしつこい油汚れは綺麗に落とす事が出来ました。
  
掃除完了、金網だけの綺麗さが目立ちます。
  

後日、この経験から今度は換気扇内のシロッコファンの掃除にも取り掛かる事にしました。
このシロッコファン、実は最後に掃除したのは震災の数ヶ月前の事で、以後3年半もの間放っておいたものです。
恐る恐る換気扇から取り外してみますとご覧の通り、年月を重ねた油かすがびっしりとこびり付いています。
  
絶望的な油の層…。
  

これはもうスプレーでは埒が明かないという事で、今回は活性液に直接浸しておくことにしました。
しばらく陽に当てて塩素分をぬいて暖かくしておいた水道水が10リットル、それに前回の残り500ccの原液を加えます(つまり20倍希釈の溶液となります)。
  

それにファンを丸ごと浸します。
  

浸す事5時間、充分時間をかけた後取り出して歯ブラシでこすってみると、予想通り油分はファン本体から剥がれ落ちてきます。
  

歯ブラシで剥がした油は新聞紙にこすり付ける様にして落とし、細かい部分は中性洗剤を付けて軽くなぞる様にして仕上げます(これが結構手間がかかります)。
  
  

作業開始から1時間後無事掃除完了、3年分の油が綺麗にとれました。
  

終了後は油分を吸わせた新聞紙などは燃えるゴミに、活性液は下水道には流さずに我が家の庭に散いて捨てました。
以前は家庭菜園も行っていましたが最近はご無沙汰となっており、残念ながら今回は、この微生物資材の植物への効果を試す事は出来ませんでした(今日現在、捨てた庭には雑草が茂っておりますが(笑))。
その分家庭内での使用に色々利用させていただき、排水溝のつまりの解消や悪臭防止などにそれなりの効果を実感した次第です。


この様な微生物資材についてはよく、「効く」「効かない」などとという○か×かの二元論で語られる事があります。そしてこの二者択一の極論から言えば、微生物資材は「効く」という事になってしまいます。
しかし実際は、微生物資材は「うまく使えば効く」というもので、「いつでも何にでも効く」という訳ではありません。
メーカーの宣伝などでは、さもあらゆる事に効くかの様な過大な文言も時折見かけますが、消費者である我々はそれをそのまま鵜呑みにするのではなく、まずはその効果を冷静に吟味する事が大切です。
そして何より重要なのは、たとえ一部の効果が実感出来たからといって、それだけで言われている他の効果すべてを信じ込むというのではなく、これはこれ、それはそれとして、その効果一つ一つを確認していくという作業をすべきだと私は思っています。
以前にも述べましたが、胸やけに効いたからと言って、その薬がガンに効く訳ではない、という事です。

世間では、「○○はガンに効く」とか「自然だから安全」などという、私から見れば極端に偏った考えに取り込まれている事例をよく見かけます。
しかしこれは業者の宣伝文句等により、物事の一側面だけに着目する様誘導されてしまった結果であって、実際の現実というのはそう単純なものではありません。
微生物の世界や自然・環境やら、或いは人体・健康・医療など、いわゆる複雑系と呼ばれている事象に対しては、簡単に解決する答えなど実はないのです。
それを「効く」「効かない」だけの極論で判断する事は、そこに「思考の停止」を招き、一方的な思想に誘導されるという大きな危険を呼び込む事にもなります。

その点からも微生物資材というものについては、まずは「万能性」を唱えるものは信用しないという事を基本とし、その上で、

 「信じ過ぎず疑い過ぎず」

というスタンスでいる事が重要ではないかと私は思います。
今回試用した微生物資材は、汚れ落としなどには洗剤との併用も薦めており、その扱いは「主」ではなくあくまで「従」の立場であり、何より「波動」などない事が最も好感が持てるものでありました。
微生物資材と言えば一つ覚えの様に一つのものばかり唱える者もおりますが、これを機に、世の中には数多くの微生物資材があるという事を知るきっかけにしていただければと思います。
くれぐれもお間違いなき様、


  これは「EM」ではありません。