杜の里から

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LUMIX DMC-TZ40は使えるか?

パナソニックのコンパクトデジカメ「LUMIX DMC-TZ40」を買いました。
自分専用機としてはすでにFUJIFILMの最強旅カメラ「X-S1」を所有していますが、相方用の旅カメラとして使えそうなものを色々探しまして、GPSWi-Fi 、タッチパネルなどの機能が揃っており、様々な評価なども参照の上、懐具合と相談の上最終的にこのカメラを選びました。

    

早速FUJIのX-S1と比較しながらの実写テストを行いましたが、その結果を見てちょっと愕然としました(以下、X-S1はフジ、TZ-40はパナと称します)。
まずはカメラの基本性能を見るため、フジは「EXRモード」、パナは「iAモード」という、どちらもカメラ任せのオート撮影で比較してみました。
尚、フジは撮像素子1200万画素2/3型CMOSセンサー 、パナは1810万画素の1/2.3型高感度MOSセンサーが使用されています。
 (フジ)


 (パナ)

フジの深みのある色合いに比べ、パナは画面全体の色合いが沈んでしまって、まるで退色している様な感じです。
しかし撮影したその場で確認した液晶画面の絵では、パナはフジと同様の鮮やかな色合いでした。
カメラの液晶画面が実際の撮影画像より鮮やかに見えるというのはこのカメラに限った事ではありませんが、それにしてもこのパナ機は、液晶画面と実際の撮影画像との差があり過ぎます。

そしてその最も顕著な例を、すぐに見る事となりました。
翌日夕日を撮影してみたのですが、カメラの液晶画面ではこの様に鮮やかな色合いでした。
 
しかしPCではorz…(クリックで拡大)

このどす黒く変色した画像は何なのでしょうか。
この結果だけ見ると、このカメラの「iAモード」は正直使えないと言わざるをえません。
当初自分のPC画面の色がおかしいのかと思って何回か調整し直したりしましたが、でもその時同時に撮ったフジの写真はこんなに鮮やかに写っています。

それにフジの液晶画面は写真とほぼ同様の画像となっており、パナ機の様に実際のイメージとかけ離れている事はありません。
この時のフジのオート撮影(EXRモード)では撮影条件により画素数も自動で調整される様になっていて、この夕日の写真は1200万の半分の600万画素(実際は3:2画面なので525万画素)で撮られています。
対してパナは1810万画素(3:2では1600万画素)で撮影されていますが、画素数が多ければ良いというものではないという事がこれでよく分かります。

このままではとても使えたものではないと感じましたが、色々見てみると、撮影時の〔セットメニュー〕画面の中に画質を変えられる「カラーモード」という項目がある事を知りました。
iAモードでは「Happy」、プログラム(P)モードでは「ヴィヴィッド」というもので、どちらも鮮やかな色合いに変更するモードです。
早速これでまた撮り比べをしてみました。
(フジ)              
 
(パナ、iAモードノーマル)
 
(パナ、iAモード:Happy)
 
(パナ、Pモード:ヴィヴィッド)
 
「Happy」は派手過ぎですが「ヴィヴィッド」は露出を調整すれば大分フジに近い色合いになる事が分かりました(例では+1/3)。
別の場所で更に比較。
(フジ)

(パナ:iAモード)

(パナ:Pモード:ヴィヴィッド)


さらにパナ機は、プログラムモードでのセットアップの中に「モニター調整」という項目があり、これで液晶画面の色合いを調整出来る事が分かり、この様に調整すると液晶画面と撮影画像が大分近いものとなりました。

この画面を見ながら、さらにテスト(クリックで拡大)。
(フジ:1037万画素)                        
 
(パナ:iAモード:1600万画素)
 
(パナ:Pモードヴィヴィッド:1600万画素、露出+1/3)
 

望遠にして比べますと、ぱっと見ではほとんど変わらないほど改善されましたので、これからはこのPモードヴィヴィッドを標準画像とする事にしました。
(フジ)
 
(パナ:Pモードヴィヴィッド)
 

さて問題の夕焼け画像ですが、この日また綺麗な夕焼け空でしたので、新たなモードと新たな液晶画面でまた撮り比べを行いました。

(調整したカメラ液晶画面)
 
(パナ:Pヴィヴィッド:露出+1/3)
 
(フジ)

今回はカメラ液晶の色と大差ない撮影画像が撮れましたので、液晶画面もまたこの調整をデフォルトとする事にします。


しかしよくよく考えてみれば、果たしてこれってユーザーがやる事なのでしょうか。
退色した様な色具合など、それこそ実際の色と比べれば分かる事だし、その色合いの差などはこちらの記事の様に、他機との比較でもすぐ明らかになる訳です(ここでも、パナ機だけ退色した様な空の色となってます)。
そしてカメラ液晶の色具合も同様、カメラ本体に色調整の機能があるのならば、まずはメーカー側の方できっちり調整を行い、それをデフォルトとすべきでしょう。
こんな液晶画面と実写画像との色合いの違いなど、そもそも「見れば分かるレベル」の話です。
パナソニックの技術陣は、これぐらいの差すら分からないと言うのか、或いは自分達が作った製品をろくにチェックもしていなかったのか、とにかく、ユーザーにこれほどの手間をかけさせるというのは、はっきり言って「手抜き」と言われても仕方がない事です。
これらの調整などは画像エンジンのプログラム修正で行える訳ですから、本来ならばファームウェアのアップデートで対応すべきですが、あいにくこの機種(DMC-TZ40)は生産終了品ですから、多分もうこれ以上のアップデートは望めないでしょう。

しかしもっと気になるのは、このカメラに関する他の様々なレビューやブログなどを見ても、誰もこの様な指摘をしていない事です。果たしてこれは、たまたま私が手にしたこの機種だけの問題なのでしょうか。
ここの所は、ぜひメーカーに問い合わせて確認してみようと思います。

そして今回このカメラを使って感じた事ですが、撮像素子が1/2.3型程度のエントリークラスのデジカメで、果たして1810万もの画素数がいるのでしょうか。
以前使用していたコンデジ(キャノンPowerShot SX130 IS)は1210万画素で、それで何の不満もありませんでした。
それが最近では1600万画素が主流になったと思ったらこのパナ機は1810万、今年発売したソニーDSC-HX60V に至っては、2040万画素というまるでデジ一眼並みの画素数となり、思わず
 「アホちゃうか」
とつぶやいてしまいます。

2000万画素など、新聞紙サイズでプリントアウトするならいざ知らず、この手のコンデジでそこまでする人などいないでしょう(そもそも、そこまでする人は本格的なデジ一眼を買います)。
素数が多くなればそれだけ精細感が得られると思いがちですが、同一サイズのセンサーの場合ならば、画素数が多くなれば光を捕らえる撮像素子のサイズ(受光面積)はそれだけ小さくなってしまいます(→参考)。
自分が所有しているフジX-S1のセンサーサイズは2/3型ですが、画素数1200万、対してパナLUMIX DMC-TZ40のセンサーは1/2.3型1810万画素、受光素子の大きさがどれほど違うかは容易に想像がつくでしょう。
素子が小さくなると一個の素子が捕らえる光の量はそれだけ少なくなり、それにより光の感度幅(ダイナミックレンジ)も狭くなり、結果コントラスト感のないのっぺりとした印象の絵になってしまいます(→参考)。
それを埋めるのがレンズ性能と画像エンジン(パナは「ヴィーナスエンジン」 、ソニーは「BIONZ X 」など)となる訳ですが、いくらそれらが優秀だとしても、根本部分のマイナスはそう簡単に埋まるものではありません。
快晴ならばそこそこの絵とはなりますが、夕方や曇り、日陰や室内という場面ではその差は歴然となります。

先日行われた「みちのくYOSAKOIまつり」で撮ったもので、夕方・日陰・逆光という厳しい撮影条件で撮った画像がありますが、果たしてどちらがより鮮明に見えるでしょうか。
(パナ:iAモード、1810万画素(3:2=1600万画素))

(フジ:Pモード、600万画素画像を少しトリミングして390万画素に)



さてここまで散々の言い様で述べてきましたが、では果たしてこの「LUMIX DMC-TZ40」は使えるのでしょうか?

私は充分使えると思います。


元よりこれは画質云々を追及する類のカメラではありませんし、GPSWiFiといった機能を求めて手に入れたものであるし、何より動画データがAVCHDというのが大きな評価ポイントでした。
旅カメラとして使用する場合、静止画ばかりではなく時には動画の方が効果的という場面に出くわす時があります(こちらの様に)。
最近のカメラではフルハイビジョン動画も録れる様になり、それならばそれをブルーレィディスクにも残したいと思うのが人情というものです。
しかし大抵のデジカメは動画のファイル形式は「AVC」や「MOV」、「MP4」など、主にPCでの処理を前提とした方式ばかりで、「MOV」ファイルデータをブルーレィディスクにダビングしようとすると、それを「AVCHD」ファイルに変換するオーサリングソフトが別途必要になります(PCでの変換作業も時間がかかります)。
デジカメメーカーの中で動画形式にこのAVCHDを採用しているのは、パナソニックソニーの2社しかありません。
PCを介さずに、直接BDレコーダーに繋いで編集が出来るという点は大きな利点で、我が家の古いBDレコーダーでもちゃんとデータを読み込む事が出来るというのは、パナ機を選択するのに大きなアドバンテージとなっています。


そして現在両社とも、ネオ一眼と呼ばれる高倍率ズーム機で、ソニーは「サイバーショットRX10」、パナソニックは「LUMIX FZ1000」という、非常に魅力的な製品を発売しています。
特にパナのFZ1000は、4K動画から800万画素の静止画を切り出せるという革新的な機能を有していて、自分的には大きさも値段ももうちょっとコンパクトなものをと思ってはいますが、これも今視界に捕えている所です。
噂ではキャノンも同様のものを考えてるらしいですが、願わくば動画データは「AVCHD」であってもらいたいものです。

LUMIX DMC-TZ40ではまだ連写を試していません。
画質は何とか及第点に近づく様調整もしましたし、このカメラにはフジにはない「星空モード」などもありますので、これから更に色々な機能を試してみて、使えないではなく、何とか使えるものにしていこうと思っています。


(「その2」はこちら