杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

南相馬市の帰還問題を特集した「あさイチ」を見る

7月13~15日の3日間、NHKあさイチ」が福島県で出張生中継をやっていました。
3日目のタイトルは、「あさイチin福島(3) 南相馬市 “帰れる”とはいうけれど・・・」として帰還問題を扱うという事で、15日の放送は録画をしてじっくりと見てみました。

番組内容の概略はNHKHPで紹介されていますが、この日「あさイチ」は福島県南相馬市常磐線小高駅前から中継を行いました。
小高地区は現在は「避難指示解除準備区域」とされ、昼間は立ち入る事は出来ますが、夜間の宿泊は制限されているという区域で、ここが来年4月には避難指示が解除される予定となっています。
しかし、指示が解除されたとしても果たして元の住人達は戻ってくるのか、番組では昨年12月に避難指示が解除された高倉(たかのくら)地区の現状を紹介しますが、そこには戻りたくても戻れない住民や、戻ったとしても受け入れ態勢が整わない町の姿など複雑な問題が絡み合い、一度失ったコミュニティの復活には多大な時間と労力がかかるであろう事が、実感として窺い知れる内容となっていました。

番組の中ほどでは視聴者からのお便りが紹介されますが、その中で福島県30代の方からのコメントが印象に残ります。
「帰ったら帰らなかった人達に、放射能も落ち着いていないし市内の設備も充実してないのによく帰れるねと言われ、帰らなかったら帰った人達や避難した人達に、大げさに騒いでいるだけ、心配ないのにいつまでも帰ってこないで、と言われる。
 安らげる所はどこにあるのだろうといつも考えます。美味しいものも大好きな景色もあるのに、素直な自分の気持ちも分からなくなっています。」

放送内容についてはこちらでより詳しく公開されていて、この日の内容はほぼ網羅されていますが、ここではエンディングのお便り紹介の部分がカットされていました。



その中で初めに有働アナが紹介したFAXは、一見番組内容を批判してる様に受け取れるものでしたが、番組では敢えてその意見を紹介し、それに対して有働由美子アナ、柳沢秀夫解説委員、瀬田宙大アナがフォローしておりますので、以下その部分を紹介します。
「誰もが気になり、
違和感を感じていると思います。
まだ住んではいけ無い場所で
なぜ平気な顔して生中継してるの?
当然中継にはぶっちゃけどれくらいの
危険性があるかのお話あっての出演だと
思いますが、どんな予備知識の上で
出演されているのか?
簡単にでいいから知りたいです。」


(有働)
あさイチでは2011年に福島に来てから毎年東北をキャラバンしているんですけども、実際に私達が来て、この地を踏んでみて感じる事をぜひ皆さんと一緒に交換したりという事で来ておりまして、今回は避難指示解除の空気が増える中で、それは一体どういう事だろうっていうのを、実際私達が感じたり伝えたいという事で来ているんですよね。」
(柳澤)
「国が当面の目標にしている放射線の量はもう下回っている地域なんで、昼間こうやって入ってこれる所なんです。決して入って来ちゃいけない地域じゃないんです。
 ただ、避難指示の解除を巡ってもそうなんですけど、放射能に対する不安ってのは皆さんやっぱり持っていたり、或いは避難指示が解除されても本当に生活が出来るのかどうかという不安で、この指示の解除そのものにもね、慎重にした方がいいんじゃないかな、という意見もある事も事実なんですよね。」
(瀬田)
「実際今回小高の皆さんを取材してみると、避難する時は理由がなく、とにかく出るしかなかった。でも4年あまり経って帰るっていう時には理由が必要だし、しかもその時間が経った重みというのを非常に複雑に感じているという事も強く仰っていました。」

  (強調は引用者によります。)

この日「あさイチ」が訪れていたのは小高地区、ここは現在も地区の内陸部には「居住制限地域」や「帰還困難地域」が存在しており、福島県の他の市や、同じ南相馬市と言っても他の地域とは事情が異なっています。
ですから住民の放射能に対する不安は理解出来ますが、それよりも現在の問題は瀬田アナが語った様に、やはりこれだけの時間が経ってしまったという事ではないかと思います。
復興が遅れる事で、避難者にとっては避難地域での新しい生活が軌道に乗り、敢えて故郷に戻る理由が薄れてきているという事実、これは他の被災地にも言える事ですが、福島ではこれに原発事故が重なる事でより複雑化している訳です。
一度崩れてしまったコミュニティの絆はどうすれば取り戻せるのか、これは決して今だけの話ではなく、次世代に繋がるこれからの大きな課題であり、今回の特集はともすれば風化しがちな被災地への感心を、改めて見つめ直す機会になったと思いますし、原発事故後に「食卓まるごと調査」の放送を行ったりと、常に生活者目線から震災を見つめる「あさイチ」らしい内容だったと感じます。
今後も片一方に偏る事なく、冷静に被災地の今を伝えてほしいと思った次第です。

番組では次に以下のFAXを紹介し、その後地元の人達の元気なイベント紹介となって放送を終えたのでした。







あさイチ」様におかれましては、この日の他のご意見FAXをぜひどこかで公開していただきたく、また返す返すNHK様におきましては、被災地ローカルニュースの全国配信を切にお願いするものです。


本文引用)
・「あさイチ」HPより『あさイチin福島(3)~南相馬市 “帰れる”とはいうけれど・・・』
・gooテレビ番組より『あさイチ 「福島キャラバン(3) “帰れる”とは言うけれど…(南相馬市)」