杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

EMへの疑問(10) ~ちゃんと検証しているの?(4)~

平成14年(2002年)の会議録では、住民達が上流へのEM投入機の設置を市に要求していたのに対し、行政側は「科学的根拠」を理由に、NPOへの補助予算を付けるに留まっている事に対しての不満が見て取れました。
それ以降の会議録を覗いてみますと、この行政への不信感の根源は、あの阿瀬知川の河床改修工事によるものであった事が伺えます。
悪臭に悩む住民達が本当に望んだのは、自然を流れる河川のようにする、阿瀬知川の「ビオトーブ化」だったのではないかと思われます。
それをあのようなコンクリート張りなどにされてしまい、住民達は大いに落胆したものと推測されます。
その事を伺わせるようなやり取りが、平成16年(2004年)6月の定例会で行われています。
(2004・6・11 平成16年6月定例会第3日)
56 (藤原まゆみ)
~(阿瀬知川浄化活動の説明)~
 ことしこの阿瀬知川の下に雨水1号幹線工事が決定し、このための説明会も自治会単位で開催していただきました。この工事により地元の阿瀬知川に ポンプ場がまた一つふえます。このポンプの増設により川幅18mが半分の9mになり、さらにヘドロが堆積するのではないかと思われます。このヘドロが堆積することが地元では大問題なのですが、本市下水道部は少しも理解しておりません。早急なるヘドロ対策が望まれております。
 また、都市化によりつくられた三面張り舗装も、その床にヘドロがこびりつき、自然破壊の大きな原因となっております。雨水対策も大事ですが、まずヘドロ対策、また、三面張り舗装の自然復元に取り組まれるべきではないでしょうか。お考えをお聞かせください。
 汚水浄化については、河川が本来持つ自浄作用により浄化が行われています。しかし、自然の浄化能力を超える外的汚染原因により有機物が腐敗発酵、酸化分解し、汚泥の堆積や悪臭の原因になっております。
 この発生原因を【もとから断つ対策】を本腰を入れて講じてこそ、初めて環境保全につながるのではないでしょうか。上流の常磐地区を含めた地域ぐるみでできる河川浄化体制づくりが大切ですが、行政は汗をかく努力をされようとはしておりません。自治会任せでなく、次の世代にもつなげていける対策が必要です。お考えをお聞かせください。

66 (下水道部長)
~(前略)~
 2点目の、阿瀬知川にヘドロが堆積したのはコンクリートで底張りをしたのが原因であり、自然体系を守るためにも底張りを撤去すべきとのご意見についてでございますが、阿瀬知川の水路改修につきましては、沿線の皆様から悪臭解消の強い要望がありましたので、平成9年から11年度にかけて、新朝日橋から国道1号までコンクリートで底張りを行ったところでございます。
 そのうち三滝通りから上流部につきましては、生態系に配慮した水生生物にやさしい池もつくっておりまして、市としても一定の成果があったものではないかと考えております。今後、上流部の整備に当たりましては、より自然環境に配慮した工夫をしてまいりたいと考えております。
 また、阿瀬知川にたまるヘドロにつきましては、年2回、定期的に水路清掃を行うとともに、必要に応じてスクリーンの清掃や土砂の撤去を行っているところであります。
 3点目の、阿瀬知川の環境を保つための上流域の抜本対策についてでございますが、阿瀬知川は上流部の常磐地区を集水区域といたしておりまして、この地区は、現在、公共下水道で鋭意整備を進めております。人口割合にいたしまして約6割に普及し、平成15年度、単年度では約6ポイント伸びておりますが、今後さらに汚水整備を進めまして、ヘドロの原因となる生活雑排水の流入を減少させてまいりたいと考えております。
~(後略)~
阿瀬知川にEMを投入してから4年、このやりとりを見る限りでは、阿瀬知川の浄化はそれほど進んでいないように見えます。
また、EMサイトでは決して取り上げられる事はありませんが、住民達の活動とは別に、行政側も定期的に清掃作業を行っていた事が分かります。
それよりも、「抜本的な解決法」についての認識の差がここではいっそう顕著に表れています。
住民達はあくまで上流部分でのEM投入に拘っており、対して行政側は、汚水の河川流入を防ぐ下水道整備こそ抜本的な解決法であると主張して、両者の言い分はずっと平行線を辿っているのです。
しかしながら行政側の方にも何の問題もなかったかと言えばそうでもありません。
「生態系に配慮した水生生物にやさしい池もつくっておりまして」とありますが、それがここの写真2の様な有様ですから、住民達の希望からは遠く離れたものであっただろう事は想像出来るというものです。
これまでの浄化活動に対する行政への不信感と苛立ちから、下水道の普及率が伸びた事の意味を知る事が出来なかったのは、ある意味仕方がない事だったかもしれません。
68 (藤原まゆみ)
 阿瀬知川の環境保全ということで、環境保全という観点で今回は質問させていただきました。きょうも地元の自治会長さん始め皆様が聞いていただいて、先ほどの下水道部長のご答弁を聞きながら、何か不機嫌な顔をしてみえたというのが、私には深く印象的でございましたけれども、環境という部分からは、下水道部長、お考えが全然ないんですね。どうやって整備をしていくかという観点でしかないんですよ。やっぱり環境というのは、たとえ阿瀬知川に流れてこなくてもほかのところに流れてったらあかんのですよ。そういう観点で私は質問させていただきました。
~(後略)~

70 (下水道部長)
 阿瀬知川の環境保全ということでいろいろとご指摘いただいておりますけれども、確かに、阿瀬知川は下水道部で管理をさせていただいておって、今回、雨水事業ということで川の下に幹線を入れていくという事業を計画させていただいております。
 それで、環境保全という観点では、私ども単独で取り組んでおるのではなくて、関係する環境部とか、上流域でいいますれば、常磐地区市民センターとか、連携をとった中で、浄化活動にもあわせて取り組んでおるというところでございますので、ご理解をいただきたいと思います。
~(後略)~
確かにあの三面張り舗装工事や湧水池に対しては、環境保全という意味合いでは住民達からは理解が得られていないようです。かと言って、行政側が環境に全然配慮していないかと言えば、それはそうではないでしょう。そもそも環境改善のために、行政は下水道整備を行っているのですから。
環境を良くしたいという思いは両者とも同じ訳です。ただその方法論の違いによってこうも意見の隔たりが生まれているというのは、実際悲劇的な事だとさえ言えるでしょう。

阿瀬知川に関する質疑はこの年はこれで終わりですが、その後平成18年(2006年)に阿瀬知川に関して、今度は前田満議員(新生会)から注目すべき質疑が行われました。
彼は前年の平成17年10月28日に四日市で開催された「EMサミットin四日市」に参加し、比嘉さんの「EMで四日市を環境都市に」という講演を聞いていたく感銘した事を受けての発言です。
(2006・2・27 平成18年3月定例会第5日)
59(前田満)
~(道頓堀川浄化活動の紹介)~
私の質問でございますけれども、先ほどの学校におけるEM活用による環境学習や、それから、阿瀬知川を美しくする会の河川浄化活動、こういうような活動に対して、環境部長として、まずどのように評価されているのかということをお伺いいたしたいと思います。
 また、阿瀬知川以外の小さな河川、これは中には下水道を兼務しているところがあるかもしれませんけれども、こういう汚れた小さな河川の浄化活動を環境部が主体的に取り組むようなお考えをお持ちかどうか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
~(後略)~

61 (環境部長)
~(阿瀬知川浄化活動をよく知っている旨の発言)~こうした市民の皆さん自身による継続的で積極的な取り組みを環境問題に対してやっていただいておるということに対しましては、深く敬意を表しているところであります。
 ただ、私どもが日ごろ行っております阿瀬知川での水質の環境監視結果、このデータ等から見てみますと、現段階では必ずしもEM菌による水質改善効果が得られたというところまでは言いがたいものもあるわけでございます。
 EM菌の有用性につきましては、現在県におきましても試験が実施をされておるところでございまして、これまでのところでは、まだ結論を出す段階には至っていないという報告を受けておるところでございます。
 EM菌の有用性の科学的根拠、これが現状明確でないという状況におきましては、私どもといたしましては、今後も引き続きその科学的知見や国、県等の情報の収集に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
平成12年から始まったEM浄化活動も6年目を迎えています。
当初劇的な変化があったと言っていた割には、この時点ですらまだEMの効果というものは実は認められてはいなかったのです。
しかし、EMに魅入られてしまった人は、中立的な判断は中々出来なくなってしまうようです。
63 (前田 満) 
ありがとうございました。多分そういう回答が来るだろうと思って、先手を打って県の結果を若干触れたんですけれども、繰り返しになりますが、平成14年に県がある業者に委託してそういう研究をなさった。考察は、やっぱり【人間の目で見た】環境の状況は改善があると。
 例えば、ヘドロで足首まではまったところがはまらなくなるとか、それから、今まで生えていなかった海草が多くなったとか、ただ、先ほど言いましたように化学的な方程式でどうこうという形の活動は、これは無機の問題ではなくて有機の問題です。
 微生物は生き物なんです。生き物だから、そういう形の方程式的な回答は得られないんだという結論になっていると【私は読み取っております。】
~(中略)~
 部長は県が引き続き調査をなさっていらっしゃるという確証は、どこで確認されたんでしょうか、ちょっとその点だけお伺いします。

65 (環境部長)
 県の報告は議員のご指摘の資料と変わらないものと思っておりますが、阿瀬知川の水質の環境監視というものにつきまして、私どもも市独自で定常的にやっておりまして、データをずっととっております。そういう状況等も含めまして、お答えとさせていただいたところでございます。
見た目では確かに、徐々にではありますが阿瀬知川の水質は改善されてきているように見えるようです。しかし問題は、それが果たしてEMの効果によるものなのかという所なのです。
こちらの資料によりますと、平成12年での下水道普及率は52.5%でしたが、平成17年では62.9%、平成18年では65.4%と10ポイント以上増加しています。平成14年の水洗化人口は131,751人、これが平成17年では162,810人と、わずか3年で30,000人以上も増加しています(注:旧資料がリンク切れとなったので別な資料と差し替えました)。
もちろんその間、行政側も河川浄化活動を行っている訳です。
この下水道の普及、具体的に言えばその接続状況や行政が行った活動も考慮して判断しなければ、確かな事は何も言えないはずです。
EMの効果を信じる人は、見た目上の効果すべてをEMのおかげとしてしまう、つまり一方向からの視点しか持てなくなってしまい、肝心なデータを見逃してしまいます。
そしてそれが、EM浄化活動のみならず、EM環境学習にも当てはまる一番の問題点であるのです。
(次回最終回)