杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

EMへの疑問(9) ~ちゃんと検証しているの?(3)~

その後四日市市議会会議録で阿瀬知川問題に触れたのは、平成14年(2002年)12月の定例会でした。
その間、地元ボランティアの人達は「阿瀬知川を美しくする会」を発足し、前年に引き続きEM浄化活動を継続していました。しかし住民達の努力にも関わらず、阿瀬知川の浄化は一向に進んではいなかったようです。
その原因は、上流から流れてくる汚水でした。
いくら下流の住民達が努力しても、上流の方からは次から次と生活雑排水が流れ続けていたのです。
 (2002・12・11 平成14年12月定例会大4日目)
46 (藤原まゆみ)
~(阿瀬知川の現況報告:上流からの汚水流入は行政の責任とする)~
 行政がNPOと地元任せにしているので、それはおかしいのではないかと言っているのです。それでも、本年はよい方で、下水道部では、阿瀬知川浄化に取り組んでいるNPO団体と1年契約をし、そのための予算も確保されました。しかし、この契約で本当に阿瀬知川浄化ができるのかと疑問を抱く点が幾つかあります。
  まず1点目は、この契約は主にEM技術を使った啓発に重点が置かれ、浄化することに重点が置かれていません。実際に上流地域の方がEM菌を生活排水と一緒に流せば、下流にヘドロは堆積せず、悪臭も発生しないのです。【それが根本的な解決法です。】
 しかし、この契約においては、啓発後のEM資材の提供については 何ら予算立てはしてありません。~(中略)~
 2点目は、下流の阿瀬知川浄化のためには、上流の久保田神社に1tタンク2基を設置しなければ下流の浄化ができません。これも契約に入っていません。材料費、人件費等一番お金のかかるところを触らないようにした契約になっています。これで、本気になって阿瀬知川浄化に取り組もうとしているとは思われませんNPOと地元自治会の資金を含めたボランティアにも限界があります。その点どのように対処されるのでしょうか。
~(以下、活動はすべてNPOまかせという現状説明及び阿瀬知川の浄化事例により浄化活動が他にも広まっている事例紹介、阿瀬知川浄化運動を町づくりに活用する提案と続く)~
  最後に、職員研修のためにEM研究の第一人者である琉球大学比嘉教授四日市に来てくださいました。その比嘉教授が公害を体験した四日市だからこそ環境行政が大切で、他市ではできないアピールなんだとエールを送ってくださいました。それを励みに、EMによる環境先進都市四日市を全国に発信されてはいかがですか。
 以上で、第1回目の質問を終わります。
河川浄化というものを考える上で、一番重要な視点は「根本原因」を潰すという事だと思います。ですから、下流の汚染に対してはその上流をという考え方自体は間違ってはいません。
しかし問題はその方法です。
EM活動を行っている人から見れば、上流でのEM投入こそ根本的な解決法だという考えを持っていましたが、ここではこの「根本的な解決法」の捉え方が行政とは決定的に違っており、そのため住民達は行政不信に陥っていた姿が見てとれます。
以下のやりとりはその視点から、分かりやすいように発言をまとめてみたものです。ここで行政と住民達の視点の「ずれ」が明らかとなり、その溝は思いのほか深かった事が伺えます。
50 (下水道部長)
 まず、1点目の阿瀬知川浄化についてでございます。
~(中略)~
 市では抜本的な対策といたしまして、地域の公共下水道整備に努めてまいりましたが、全区域を整備するにはまだまだ相当な時間がかかる状況でございます。
 したがいまして、応急的な対策といたしまして、定期的に水路清掃あるいはヘドロのしゅんせつを行ってきたところでございます。しかし、こういった事業は生活雑排水の放流が解消されない限り、限りなく続ける必要がございまして、その対策に苦慮してきたところでございます。
 平成9年度から平成12年度にかけまして、 ヘドロが堆積しないように、環境対策といたしまして水路のコンクリートにての底張りをいたしました。これにつきましては、自然環境の点もあり、賛否両論がございましたのはご存じのとおりでございます。
 このような状況下、平成13年にボランティア団体から1年間の期限つきで、EM技術、すなわち有用微生物群活用技術と日本語でいうと思うんですが、による浄化活動の申し出がございまして、自治会のご協力のもと、この活動がスタートしたところでございます。
 これらの結果、科学的な根拠や因果関係は今の時点では明確にはなっておりませんが、周辺地域の住民の皆様方からは、活動以来、悪臭が感じられなくなったとの実感報告が寄せられている等、効果も出たこともございまして、常習化しておりましたしゅんせつ作業は現在では行っておりません。

52 (藤原まゆみ)
 阿瀬知川の浄化ですね。下流の住民とNPO団体だけが浄化せなあかんのかどうかというお答えがなかったんですよ。それ一度お答えいただけませんか。
~(以下、「官民協働」に対する不信感の表明)~
 もう一つは、EM技術がなぜここでとまっとるかというのを、私たちも何回も不思議に思ったんですけど、このごろやっと本音を言ってくださるようになりまして、EM技術が庁内には認められておらんぞと。
 なぜかというと、科学的根拠がない。水質検査の数字が出ていない。それさえありゃ何とでもできますよという話を何回もされました。~(中略)~
 私、環境会計的に言うても、役所がしゅんせつ工事したら3,000万円でしょう。NPO自治会に任せたら200万円やね。で、こんなに安くする方法はないって思いますよ。
 それは単に金勘定したらそうやわね。川を本当に浄化しようという気持ちが全然入っとらへんの。お金をかけずに口先だけで、阿瀬知川浄化を地元の自治会とNPOに任せ、こんなぐらいのことでそうはいきませんよ。~(中略)~
 自治会とNPOはEM菌で阿瀬知川浄化がどんどん進むんですけど、盛り上がってくると「科学的根拠がない」という水を頭からざぶっとかぶせられるんですね。~(中略)~
 市長はいつもいつも阿瀬知川浄化作戦には顔を出してくださり、一緒に川にEMだんごも投げ込んでいただきます。地元自治会が何か要望すると、二言目には下水道部の次長に任せてあるからと言われます。NPOも地元自治会もそれを信じて活動いたしております。
 でも、次長に言うと、科学的根拠がないからあかんといってはねられるんですよね。この繰り返しを何回もしております。~(中略)~
  今、部長、成果を見きわめた上で判断するって言われましたね。成果、今まで判断しとらへんのですか。~(中略)~
 上流から雑排水は 毎日ずっと流れてきて、ごみも流れてくるんですね。それを下の方で一生懸命浄化しとるんですよ。それは成果を見た上で判断するのやったら、もう判断しやん方がええんじゃないですか。
~(以下、鈴鹿市で機械が導入された実例報告)~
 もう一つが、久保田神社への1tタンク2基の設置です。これも先ほど話させていただきましたけど、下流を浄化するためには久保田神社へ1tタンク2基がどうしても必要なんですよね。
~(中略)~
 そやのに、途中でぽおんぽおんととめるとあかんのですよ。上流で啓発すると、資材がないとかいうことがあるもんですから、NPOは今、資材がないもんで、啓発しようと思っても啓発できないので、今とまった状態なんですよ。足踏み状態なんですね。
 先ほど、公共下水道が完備したら何事も解決されるような話をされてましたけど、一番初めに、私、自然生態系が50年前と比べると100分の1になっとるよっていう話をさせていただきましたけど、自然体系を壊したらあかんのですよね。
 だから、下水道事業も、自然体系を守るというんだったら【公共下水道にしない方がよいと思います。】
 臭いものにはふたというんじゃなくって、【浄化体制さえ整えば】昔のようなきれいな阿瀬知川になるんですよね。啓発と資材提供について再答弁をお願いいたします。
~(後略)~

56 (下水道部長)
 EM技術についてちょっとお話がございました。例えば、担当者が言うてきたのを、部長、あんたがとめとるんやないかというようなおしかりもいただいたわけでございますが、決してそういう意味やなくて、先ほど議員のお話もございましたが、10月21日にEM技術の研究者でございます琉球大学の比嘉先生がおみえになりました。その中で、いろんなお話もお聞きさせていただいたわけでございますが、下水道部として、全庁で初めて取り組んでおるわけでございます。
 十分、今後も検討しながら一歩一歩進んでいかないかんと思いますが、その中で、例えばヘドロの処理が安くでき、あるいは、きれいな水がよみがえるということであれば、今後、この技術に科学的な根拠も裏づけをした上で、全庁的にも取り組みができるのではないかというふうに考えておるところで ございます。

58 (市長(井上哲夫 ))
 今、いろいろな面でEMと河川浄化のご質問を藤原議員がされたわけですが、問題は体制づくりだと議員もおっしゃっています。
 正直申し上げまして、EMがどれだけ河川浄化に効果があるのか、どういう因果関係があるのかということは、残念ながら、まだ今の時点でははっきりわからない。ただ、比嘉先生もおっしゃるように、EMを出したら全く悪い効果が出たということは全国どこにもないんだ。著しい効果が出た。いや、余り効果が出なかった。いや、効果の評価はどうなんだ。
 こういうところで、私ども四日市市も、実は阿瀬知川で市民運動の方や、あるいは自治会の方や、地域の方が一生懸命EMを投入することによって、下流のヘドロのにおいをとることに努力をしていただいている。このことについては、今、下水道部長が申し上げましたように、平成14年度からは初めてその団体と契約をして、わずかな助成でございますが、そういうことができるようになった。この体制づくりをこれからきちっとやっていかなければならない。
 一方、行政は河川管理の責任を最終的に持っているわけでございますので、その河川の整備の問題で、やはり効果の問題と、一方では市民活動の問題と、そして行政のかかわりというものをきちっと整理しながら前へ進んでいかなければならないところだと思います。で、私どもは決して逃げているわけではなくて、前に進みつつあるということをご理解願いたいと思っているわけであります。

60 (藤原まゆみ)
~(前略)~
 それから、あとEMの方なんですけれども、市長が体制づくりが大事やで、これからしていくと。ちょっとは前へ進んどると、それを認めてほしいということ で、認めさせていただきますけれども、鈴鹿市がEMを導入した理由は、安いことと安全なんですね。2点なんですよ。
 そんで、科学的根拠とかはどうするのと言ったら、そんなの要りませんわなあて言うてましたので、四日市は大事かわかりませんけど、鈴鹿市はそれほどでもないなというふうに私は考えていたんですね。
 で、科学的根拠って人を当てにせんと、自分のところで水質検査もしてるんですし、現場をよう見てもらえば、ある程度の科学的根拠というのはつかめると思うんですよね。
~(中略)~
 だから、今回、4回も5回も意見交換していただいてますに、部長。そやけど、いつもそこなんやに。そこが壁なんですに。それをよう自覚してもらわないと、人の意見聞いとったらええわと。意見聞いて何かお茶を濁しとったらええわと、そんなことは絶対ありませんから、本当にきちんとした体制づくりをとっていただきたいと思います。
現場の住民達は、悪臭もヘドロも減ってきて、EMによって確かに効果があったと信じている訳です。そして更なる効果を期待する上で、上流へのEM投入機器の設置を望んでいました。
しかし行政側は、NPOに補助予算を付けたり広報などでは活動を紹介するなどしていましたが、「科学的根拠」を盾にそれ以上の積極的な関与は行っていなかったようでした。
その間にも、隣の鈴鹿市では行政が積極的にEMを導入したり、他の地域でも阿瀬知川に習ってEM浄化活動を開始していました。当の四日市市の状況を見るにつけ、議員さんが苛立つ気持ちも分からないではありません。
確かに悪臭については改善の方向に向かっているようですが、しかしそれにしても、「公共下水道にしない方がよい」というのはあまりにも暴論ではないかと思えます。
たとえ汚染された所がEM投入で綺麗になったとしても、その汚染源がそのままでは延々と投入をし続けなければならないでしょう。
それはちょうど、病気になった体の痛みを和らげるために痛み止めの薬ばかりをずっと飲み続けているのと同じ事で、病気そのものを直さなければ根本的な解決にはならないという事にまるで気がついていないのです。
そしてこの対立(私にはそうとしか見られないのですが)は、翌年以降も続いていったのです。
続く)