杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

口蹄疫でのEMとその呆れた宣伝(前編)

猛威を振るった口蹄疫がようやく収まり、世間ではまるで何事もなかったかのような落ち着きを取り戻しています。今日このように平穏な日々となったのは、これはひとえに地元宮崎の畜産農家の方々のご苦労と、それに携わった多くの人達の協力のおかげだと思います。

この口蹄疫の対策には様々な方策が用いられましたが、その中ではEMを活用したものもあり、そのボランティア活動に9月、山田正彦農林水産大臣(現在は農林水産委員会委員長)から感謝状が送られた旨が比嘉さんから報告されています。
しかしその報告がまた、EMの万能性・神秘性をより一層強調する様な宣伝となっており、たとえ実際にEMが役立ったとしても、やはりこの報告には一言言及せざるを得ません。

今回の口蹄疫でEMが果たした役割について、「新・夢に生きる〔40〕」にてこのような説明がなされております。
その中で思わず目が点になってしまったのが次の記述です(強調は引用者によります)。
EM関係者の間では広く知れ渡っているように、EMは結界をつくる性質があります。畑の4隅に、EMセラミックスやEM1号の活性液をペットボトルに入れてつり下げておくと、カラスはまったく来なくなり、ヒヨドリ等もほとんど侵入しなくなります。同時に、その内側にある作物がいつの間にか安定的に生育するようになります。もちろん、4隅だけでなく、畑を囲むように4~5m間隔につり下げるとさらに効果的です。

畜産農家でEMを使い悪臭が外部に広がらなくなると、かって悪臭が感じられた範囲にEMのバリア(防護帯)が形成され、その中には口蹄疫のウイルスをはじめ鳥インフルエンザなどの有害な微生物の侵入をくい止めるが形成されます。EMを使っている農家は絶対に大丈夫と発言したのは、そのためです。
「結界」、「場」など、いかにもそれらしいイメージを抱かせる様な単語を用い、EMの神秘性を演出しています。
私は、松窪さんに電話でえびの市畜産農家のEM活用件数と各々の分布状況を確認した時点で、えびの市全域にEMによる結界ができていることを感知しこれで、えびの市は大丈夫であるという結論を出しました。

私は、このような背景から「えびの市は、これ以上感染が広がることがなく絶対に大丈夫です。しばらく状況を見て欲しい」旨を、口蹄疫の対策本部長の山田正彦農水副大臣(当時)に直接電話でお伝えしました。
つまり比嘉さんは、地図上でEM農家の位置を見て、この配置が〔結界〕を作っていると判断し(感知し)、たったこれだけの根拠で山田対策本部長に「絶対に大丈夫です。」と言ったと述べている訳です。
勿論これは、ただ比嘉さんがそう思っているだけであり、何の根拠もない発言である事は普通に考えればすぐ分かる事です。
しかし、実際ぎりぎりの状況で冷静な判断力を失っている様な場合には、どんなおかしな言説でも思わず飛びついてしまうという事はままあるのです。
元山田農林水産大臣(当時対策本部長、当時の大臣は赤松広隆氏)は、比嘉さんの言った通りえびの市の感染が止まったので、それを持ってして比嘉さんの〔結界〕なる概念を信じ込んでしまったようなのです。
報告では
山田対策本部長はその後えびの市を訪れ、松窪さんたちの「えびのEM研究会」のボランティア活動も確認し、「比嘉先生の言われていることは十分に理解できたが、これを役所の専門家に理解させるのは、極めて困難」と言うコメントをいただきました。
とあります。
人は、ある先入観を一度植え付けられてしまったらもうその見方からしか判断出来なくなるもので、比嘉さんの言葉を信じたEM利用者はすべてEMのおかげと思い込んでしまいます。
えびの市が沈静化したのを見た山田大臣は、そういうEM利用者の所を訪れ、多分彼らが言う所のEM効果というものを目の当たりにした事でしょう。
EMによる感染防止帯はニオイが広がる3~4倍、かなり厳しく見ても500~1000mに及びます。したがって、EMを使っている畜舎畜舎の間が最大2000mくらいあっても、時間の経過とともに結界ができることになります。この結界は地域全体に好影響を与えますので、多聞に今度の口蹄疫騒動でえびの市は新しく生まれ変わり、市民全体が協力的になっていると思います。
住民達はあの騒動での当事者なのですから協力的になるのは当然であり、実際えびの市では政府からの指示が来る前にいち早く殺処分や消毒等の防護処理、住民の移動制限などあらゆる手立てを行っています(→こちら)。
ところが比嘉さんは、口蹄疫が収まったのはEMで結界を作ったからであると言い、その言葉を山田大臣は信じてしまったという事なのです(あくまでこの報告の中ではですが)。

勿論EM側が何もしなかったのかと言えばそうでもなく、新富町での殺処分された牛達の埋却処分で、匂い消しや埋却方法において役に立ったというのはどうやら本当の事であるようです。
確かにこの部分については、有機物の分解を促すという微生物資材の使い方としては理にかなった方法とも思えます。
そしてその事がまた、現場からの信頼を勝ち得た一つの要因でもある訳ですが、しかしEMが直接的に役に立ったのはあくまでもこの埋却処分においてであって、EMだけのおかげで口蹄疫がすべて収まったという訳では決してないのです。
しかしこの報告の中では、
その後、宮崎の口蹄疫は、またたく間にしぼんでしまいました。消毒を徹底し、従来の埋却処理の効果も、それなりに大きな力となり、確かな成果と結びついている面もありますが、家畜管理の一環としてEMを活用しておれば、このような惨事にはならなかったと思います。
などと、実際の防除作業についてはあっさりと述べられているだけで、しかも「EMを活用しておれば、このような惨事にはならなかったと思います。」などと、被害に遭われた畜産農家の方には誠に酷な言葉を投げかけ、そしてしっかりEMを宣伝している訳です。
比嘉さんはあくまで、口蹄疫が収まったのはすべてEMのおかげと言いたいのであり、その事は別のEM機関紙「『善循環の輪』通信」でも述べられています(こちらで紹介されてます)。
その中では大体こちらと同じ様な事が紹介されていますが、もっと頭が痛くなる事も述べられています。
私は0(オー)リングテストをベースに臭気やハエの状態等を含め、同行した関係者に現場における浄化レベルのチエック法を教示しました。その結果、EMを処理された埋却処分場はその周辺の畑地よりもはるかに波動が高くなり、完全に防止できた状態になっていました。
埋却処分場の「波動」が他よりも高かったから、口蹄疫は完全に防止できたと判断した訳です。
同行した関係者(新富町の担当者)は、これでEMの「波動」信者となってしまったであろう事は想像に難くありません。
後編に続く)