その名も、
「世界を変える超技術」、東江幸信著、1994年12月21日初版、㈱かんき出版。
副題にはこうあります。
「農業・畜産・環境・健康にバイオ微生物で貢献する」
この著者、東江幸信って「アガリエユキノブ」って読むんです。
そう、知る人ぞ知る、万能微生物と言われる「アガリエ菌」の発見者その人が書いたものです。↓
しかしこの題名といい装丁といい、何かあれに似てますよね。
でもなぜか、農業関係者の中ではボチボチと知られてはいるみたいですが、自治体やら学校やらではこの「アガリエ菌」というのはほとんど知られていません。
それはなぜなのか?
そこで今回は、この本の中身を、比嘉さんのと比べながら読んで見る事にしました(比嘉さんのについては、galleryさんとこを参照して下さい)。
表紙をめくってみるとまず「はじめに」が始まり、そこのタイトルにはゴシックでこうあります。
湾岸戦争の廃油処理に使われたアガリエ菌
ほほ~、こりゃすげぇ!
なんて思わず引き込まれてしまったりするのですが、続いて、
目的に合わせて放線菌をつくりかえる
アガリエ菌を使えば使うほど環境は浄化される
なんてタイトルが次々と登場。いやこれは…。
思わず比嘉さんのを思い起こしてしまうのですが、実際読んでみるとトンデモという事ではなく、例えば「放線菌をつくりかえる」という所は、
(p.4~p.5)
バイオメイク(微生物をつくる)という社名の示すとおり、私は放線菌の一種をベースにして、独自に開発した変異操作技術(変異技術および再度変異させない技術)を施すことによって、種々の機能を持つ微生物を開発し、提供してきた。
バイオメイク(微生物をつくる)という社名の示すとおり、私は放線菌の一種をベースにして、独自に開発した変異操作技術(変異技術および再度変異させない技術)を施すことによって、種々の機能を持つ微生物を開発し、提供してきた。
と、あくまで会社の業務内容説明みたいなものとなっていました(中身が本当かどうかは別として)。
その後マスコミに取り上げられた事などが紹介されて本編が始まる訳ですが、その目次がまた比嘉さんのに負けじとも劣らず。
ではまずはそれから見てもらいましょう。
序 章 「アガリエ菌」が地球を救う!
汚泥や生ゴミを食べる不思議な微生物
微生物技術で何ができるのか
沖縄にしかいないアガリエ菌を発見
一九年間で二〇〇種以上の微生物をつくりだす
冷夏、熱夏で効果を発揮したアガリエ菌
畜産業の諸問題も一挙に解決できる
無農薬ゴルフ場への革命
医療分野でも大きく貢献するアガリエ菌
地球環境にも著しい効果が期待できる
家庭の生ゴミもこれで簡単に解決
第1章 このバイオ技術で農業に革命が起きた!
農業を根底から変えるアガリエ菌
微生物に情報を与える
◎アガリエ菌の導入でトマトの味が一変
アガリエ菌で農業生産は大幅増
田畑の連作障害を克服する特効薬
イグサの連作障害もこれで解決
アガリエ菌で病害虫駆除も万全
◎品質抜群の紅イモづくりに意欲を燃やす
第2章 アガリエ菌は畜産業をこれだけ変えた!
悪臭公害もアガリエ菌で解決できる
病気が発生しない環境をつくりだす
◎一回の投入で長期間効力を発揮
◎六〇トン使っていた水が一〇分の一に激減!
コストを下げた健康的な畜産業に転換
自治体も積極的なアガリエ菌
慢性毒性に対するきびしい検定が必要
微生物の希釈使用は避ける
◎アガリエ菌で生育が二週間早くなる
◎たった四、五日で廃生肉が骨になる
無公害豚舎がついに実現した
◎アガリエ菌で健康家畜づくりに期待
エサに混ぜて仔牛の出荷月齢を大幅に短縮
◎薬づけの牛などだれも食べたくない
アガリエ菌全国展開のきっかけ
廃棄物でもこんなに高く売れる
一度使うと手放せなくなる「ペット悪臭処理菌」
◎頑固なダニと皮膚病が一気に解消
◎玄関先の悪臭が消えた
◎しつこい皮膚病に効果が見られた
第3章 バイオの潜在能力が医療を変える!
人はなぜ病気になるのか
身のまわりは病気を増やす環境ばかり
泡盛の粕はガン予防に効果大
エキスは肝硬変にも効果的
ゼンソクや咳止めに効く沖縄の薬草パワー
成人病に効果大のコヘンルーダー
「こめこめエキス」の体験例
◎腎臓末期ガンから生還した
◎「余命三ヵ月」の祖母の命が延びた
◎胆石の手術後みるみる回復した
◎脂肪肝が完治した
◎お酒を飲んだ翌朝でも顔がすっきり
◎ポリープがきれいに消えた
◎ウエストまわりが見違えるほどすっきり
◎便秘も生理痛も治った
◎更年期障害を克服した
◎ダイエットに効果抜群
◎体調の悩みをすべて解消
「コヘンルーダエキス」の体験例
◎アトピー性皮膚炎とゼンソクが治った
◎糖尿病が回復した
◎看護婦も驚くほど血圧が下がった
◎しつこい肩こりから開放された
◎ぎっくり腰がすっかりよくなった
◎ヘルニアも完治した
◎腰の痛みがとれて歩けるようになった
◎持病の腰痛とついに縁が切れた
◎交通事故の後遺症から立ち直った
◎長年苦しんできた関節の痛みがとれた
◎神経性リュウマチの痛みから解放された
◎半月で体質が変った
「琉球ヨモギエキス」の体験例
◎つらいゼンソクから解放された
◎仕事をしながらゼンソクが治った
◎咳が止まってよく眠れるようになった
◎驚くほど自然にゼンソクがおさまった
◎孫の風邪にも効果てきめん
「水虫シャンプー」の体験例
◎不快なかゆみがぴたりとおさまった
◎職場でも完治者が続出した
◎靴から靴下なで徹底的にきれいにする
◎しつこい水虫があっという間に治った
エイズの克服にも期待
第4章 環境問題はバイオ技術で一挙に解決!
「山紫水明の国・日本」は過去の話
淀川の水はなぜ日本最悪になったのか
一メートルのヘドロも一ヵ月で食いつくす
悪臭問題を構造的に解決する鉄則
アガリエ菌の活用で生まれる七つのメリット
無農薬ゴルフ場として順風満帆のスタート
◎グリーンの管理コストが激減
日本中のゴルフ場で無農薬管理が進む
第5章 「生ゴミ」が宝の山に変る!
ゴミの悪臭がたちまち解消する秘策
家庭の生ゴミや天ぷら油の処理も簡単
いま農学者が最も恐れていること
アガリエ菌は使えば使うほど収穫がアップする
クズがいつでも宝の山になる
終 章 「本物技術」でなければ二一世紀は生き残れない
困ったことがビジネスチャンスになる
アガリエ菌は人類・地球の共有財産
いや~、しかし凄いです。
目次だけなら決して比嘉さんにも負けておりません!
で早速期待を込めて読んでみたんですが、何かまるで……
企業パンフレット読んでるみたいです。
アガリエ菌というのは、著者の東江さんが沖縄県南部の西原町という所で偶然発見した新種の放線菌であるらしいのですが、これが高温発酵するという凄い菌でして、これに変異操作を施してさらに新種の微生物を作る事が出来るというものらしいです。
彼の会社「バイオメイク微生物研究所」では、このアガリエ菌を元にすでに200種もの菌を作りだしているというのですが、このアガリエ菌、実は企業秘密だそうで、よって新種の放線菌としての報告はしておらず、下の表にも登場してこないそうです。
で、この本、こういう一覧表なんかが随所に散りばめられておりまして、それでついついパンフレットの説明を読んでいる気分になってしまうんですね。
それよりも、あの凄まじい量の体験例(◎印項目)、これ、「アガリスク」ですか!
それでも比嘉さんのとは違い、この本には「波動」なんてもんは出てきません。
つまり、あくまで一企業の製品の宣伝本という形態をとっていて、だからこそ「読み物」としてはあまり面白くないのです。
これに対して比嘉さんは、自分の生い立ちやら農業にたいする理念やらもとうとうと述べていて、そのストーリーテラーぶりは明らかに比嘉さんの方が一枚上手という印象です。
しかしながら、比嘉さんの「地球を救う大変革」の初版は1993年10月20日ですが、こちらは後発の1994年12月21日に出版されてます。
おまけにこの東江さん、比嘉さんと同じ沖縄県出身の方ですから、随所にライバル心がむき出しとなっている箇所を発見でき、そこを見ますと中々に面白いものとなっています。
例えば次の文章。
(p.33)
これまでにも数多くの企業や研究所が微生物をつくりだしてきたが、微生物学会で共通する認識は、「微生物は共存できない」ということである。
たとえば一種類の強い菌が存在すると、ほかの菌は全部殺されてしまうというのが微生物学の常識である。つまり微生物は共存共栄できない、ということが定説になっている。私も長年の研究から、これは揺ぎないものであると考えている。
それでは、ひとつの微生物で環境管理ができるかといえば、これはできない。
いままでの研究で病害菌はわかっているから、病気を起こす菌と起こさない菌を区別して、いい菌同士を集めることはできる。しかし何百種類、何千種という微生物が住む土中では、いい菌だけを集めるということはできるものではない。
なぜなら、微生物が何百種類いても、たったひとつの菌だけが生き残る支配劇を演じてしまうからである。
いままで販売されている微生物制材(原文ママ)を見てみると、そのほとんどが、何十種類、あるいは何百種類もの微生物が入っている。だから効果のほうもさっぱりあらわれない、というのが実状である。
これまでにも数多くの企業や研究所が微生物をつくりだしてきたが、微生物学会で共通する認識は、「微生物は共存できない」ということである。
たとえば一種類の強い菌が存在すると、ほかの菌は全部殺されてしまうというのが微生物学の常識である。つまり微生物は共存共栄できない、ということが定説になっている。私も長年の研究から、これは揺ぎないものであると考えている。
それでは、ひとつの微生物で環境管理ができるかといえば、これはできない。
いままでの研究で病害菌はわかっているから、病気を起こす菌と起こさない菌を区別して、いい菌同士を集めることはできる。しかし何百種類、何千種という微生物が住む土中では、いい菌だけを集めるということはできるものではない。
なぜなら、微生物が何百種類いても、たったひとつの菌だけが生き残る支配劇を演じてしまうからである。
いままで販売されている微生物制材(原文ママ)を見てみると、そのほとんどが、何十種類、あるいは何百種類もの微生物が入っている。だから効果のほうもさっぱりあらわれない、というのが実状である。
(強調は引用者)
いやこれ、具体的な商品名は出てきませんが、もろにEMを指しているのは明白ですね。そして比嘉さんの主張を真っ向から否定してます。
それに比嘉さんは、様々なEMの効果が後に分かってきてそれに後付けとしてトンデモ理論をくっつけているのに対し、こちらはあくまで実態報告の形に留めているのです。
例えば「微生物に情報を与える」という項目でも、
(p.53)
放線菌がカビと微生物の二つの形態を持つことに着眼し、畑の病害糸状菌を溶菌処理させることにしたのである。
放線菌がカビと微生物の二つの形態を持つことに着眼し、畑の病害糸状菌を溶菌処理させることにしたのである。
と、実際はよく分かりませんが、それでも比嘉さんの「転写」よりはまともに聞こえます。
それでも、じゃあすべて信用できるかというと、そうもいかないところもある訳です。
豚舎などで死肉が出た場合、その死体をアガリエ菌を応用した廃生肉残渣処理菌で処理すれば良いという記述があります。体験例では親に潰された子豚をこれで処理したら4、5日で骨になったとありましたが、次にこんな記述があるのです。
(p.93)
じつは以前、アガリエ菌を応用して骨までなくしてしまう菌を開発したことがあったが、これはやめることにした。というのも、こんな菌をもし人間に使われたら、死体なき殺人事件が続出してしまう恐れがあるからだ。
アガリエ菌は、そんなことに使われたくないため、せいぜい骨だけは残すという段階でストップさせているのである。
じつは以前、アガリエ菌を応用して骨までなくしてしまう菌を開発したことがあったが、これはやめることにした。というのも、こんな菌をもし人間に使われたら、死体なき殺人事件が続出してしまう恐れがあるからだ。
アガリエ菌は、そんなことに使われたくないため、せいぜい骨だけは残すという段階でストップさせているのである。
これなんかつい「ほんとかぁ~~~?」なんて思ってしまうのですが、何せこのアガリエ菌、「企業秘密」のベールに包まれているので、結局彼の言う事も本当か否かは知る事は出来ないのです。
このアガリエ菌、もちろん環境浄化にも使われており、方法はEMと同様河川の汚泥に直接投与という方法なのですが、EMが「蘇生の方向に変化させる」という訳の分からない説明なのに対し、こちらは「汚泥物を食べて炭酸ガスと水に分解してしまう」と、極めて明快な答えを述べています(基本的には私が実験している「平石式生ゴミ処理」の原理と同じです)。
この模様も本の中で紹介されていますが、↓
しかしこの結果については、やはりEM同様詳しい検証が必要でしょう。
そしてこの本の中で最大の見所は、何と言っても第5章の「いま農学者が最も恐れていること」です。
ここ、何だと思ったらすべて「EM批判」でした。
この内容について詳しく紹介したいのですが、残念ながら日記の字数制限に引っかかってしまいました(あの目次のせいや!)。
そこで急遽二部構成とし、その内容は後編でじっくり紹介する事に致します。
(後編に続く)