杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

「ツリー・オクトパス報道」から読み取れる事

ネットを徘徊してましたら興味ある記事を見つけました。

なぜ生徒たちは絶滅種「ツリー・オクトパス」を信じたか】(記事はこちら

この中で大西さんは

どの生徒たちも、そのサイトの情報ソースなどを吟味することなく、「ツリー・オクトパス」の存在、またそのサイトで書かれていたことを皆信じ込んだというのです。もちろんそんなタコは存在しません。
しかしその事を明かしても、まだ納得しない生徒までいたというのです。

インターネットの情報を吟味し、読み解く能力を持たないと、いかに危険なことになるかということですが、この実験は根本的に間違っているように感じます

とし、問題は読み解く能力の重要さではなく、

「ツリー・オクトパス」の実験は、生徒にとっては権威である先生、嘘をつくことなど思いもしない信頼している先生が宿題を出したという時点で、「ツリー・オクトパス」は、すでに信じるに足る情報になっていたはずです。

この「ツリー・オクトパス」の実験は、権威のある人や組織から流れてくる情報には、人は無批判に信じてしまいやすいというように解釈できます。
(強調は引用者)

とし、インターネットそのものよりもマスコミやから流される情報の怖さについて指摘なされています。
さらに情報についての信頼性というのもこれからは人と人との「つながり」も無視出来ず、この実験でも教師と生徒という「つながり」も無視出来ないのではと仰っています。

確かにこれは重要な点であるとも思い、元々のCNNの記事が見てみたくなりちょっと調べてみましたら、2月7日に以下の記事をみつけました。↓
http://edition.cnn.com/2011/US/studentnews/02/06/transcript.mon/index.html
ここの中ほど、〔Tree Octopus?〕という小さな記事がそれの様です。
短い記事ですので以下に全文紹介してみます(読みやすい様に改行処理を行いました。尚翻訳はgoogle翻訳を使用しています)。

AZUZ: Your teacher tells you about an endangered species: the tree octopus. Your assignment is to go learn more about the animal, and there's a web site with all the information you need for your report.
Only problem? The entire thing is a hoax! That really happened.
The Department of Education sponsored a study run by researchers at the University of Connecticut. They set up this fake web site about the tree octopus filled with all kinds of facts. None of them true; there is no such thing as tree octopus.
The researchers wanted to see what kind of impact the internet can have on students' ability to think critically.
These were seventh graders. And not only did they accept all the facts on the web site as they were written, after the students were told it was all made up, some of them still refused to believe it was a hoax.

AZUZ: あなたの先生が絶滅危惧種:ツリー・オクトパスについてあなたにこう話します。 あなたの課題はこの動物についてより詳しく調べる事で、あなたのレポートに必要なすべての情報があるウェブサイトがあります。と。
唯一の問題は?  すべてがニセモノであるという事です!  それは本当に起こりました。
教育省はコネティカット大学の研究者によるこの研究を後援しました。 彼らはツリー・オクトパスに関する様々な事実についてのニセのウェブサイトをセットアップします。 それらはすべてニセモノで、 ツリー・オクトパスなどというものはありません。
研究者は、インターネットが学生の批判的思考力にどういう影響を与えるかを見たがっていました。
これらは7年生(訳者注:日本では中学1年生)でした。 そして彼らは、彼らが書かされたウェブサイト上のすべての事実を受け入れただけではなく、それらがすべて作られたものだと言われた後も、生徒達の何人かはそれがニセであると信じるのをまだ拒否していました。

なるほど、この記事だけなら大西さんの意見も良く分かります(ちなみにニセサイトとはこのようなものです)。
しかし、より詳しく調べてみると、この記事にはまた別の側面がある事が分かりました。それについては「5号館のつぶやき」さんがこちらで取り上げています。
つまりこの話題はすでに2006年頃から取り上げられていたものであり、それがたまたまあるメディアで誤った形で取り上げられ、その情報ソースを元に他のマスコミ各社がそのまま流してしまったという事のようです。

2月9日、「Newsy.com」がこの件を詳しく取り上げていました(→こちら)ので、その内容を以下に紹介します。

  Tree Octopus Story Dupes the Gullible
  ツリー・オクトパスの話は騙されやすい人を騙す


Several articles describe a study on duping kids with a spoof site, but did those articles get their information wrong too?
いくつかの記事は偽装サイトに騙される子ども達の研究を記述しているが、しかし、これらの記事はあまりにも情報が誤解されている?

The internet is making your kids gullible! At least, if you believe the headlines. This week, a story broke that highlighted how easy it is to fool children and journalists.
インターネットはあなたの子供をだましてしまいます! 少なくとも、あなたが見出しを信じるならば。今週は、子供たちやジャーナリストを欺くのはいかに簡単であるかという話をお送りします。

Researchers assigned internet-savy 7th graders to report on the fictional Pacific Northwest tree octopus. The students found a site full of information, and failed to figure out that it was a hoax.
研究者はインターネットに精通した7年生に、架空の太平洋岸北西部のツリー・オクトパスについてレポートするよう割り当てました。学生は完全な情報サイトを見つけ、それがデマである事を見抜けませんでした。

Journalists ran with the story that the internet is making kids gullible, despite the fact those very reports got a lot of things wrong. Here are some of the headlines:
ジャーナリスト達はインターネットは子供達を騙されやすくするなどという話を垂れ流します。実際たくさんの間違った報告がなされているにもかかわらず。ここに見出しの一部があります:

The Daily Mail wrote: “Elusive ‘tree octopus’ proves how gullible web generation is.”
Technorati wrote: “Internet Creates Learning Crisis for American Schools.”
Live Science wrote: “Kids Believe Literally Anything They Read Online.”
The Daily Mail  "見つけられない‘ツリー・オクトパス’は、ウェブの世代がいかに騙されやすいか証明している。"
Technorati  "インターネットがアメリカの学校での学習危機を生み出す。"
Live Science  "子供達はオンラインで読むものを文字通り信じてしまう。"

Many reports claimed the researchers created the web page for the study, even though the spoof site has been available for years. Reports also framed the story as though today’s kids are especially gullible, but the researcher said on CNN that isn’t the case.
多くの報道は、研究者が研究のためにこのWebページを作成したと主張している。偽装サイトは何年もの間利用されているのに。報道はまた、今日の子供達は特に騙されやすいというストーリーを組み立てる。 しかし、それはそうではないと研究者はCNNで語った。

Dr. Leu: “This study doesn’t show that the internet is making us more gullible or more stupid. … the internet demands additional new reading skills and we need to prepare the next generation for those.”
Anchor: “...do you think they’re a little bit more gullible than other generations?”
Dr. Leu: “No, actually, I think they’re probably brighter and more informed...”
Dr. Leu:“本研究では、インターネットは私たちをより愚かに、より騙されやすくしているという事を示してはいません。… インターネットは今まで以上の新たな読解力を要求し、我々はそれらを次の世代に準備する必要があります。”
司会:“..あなたは、彼らが他の世代よりもより騙されやすくなっていると思いますか?”
Dr. Leu:“いや、実際には、彼らはおそらくより賢くより熟知していると私は思う...”

He went on to say adults generally don’t check their sources on the internet either. Media critics, including a writer for Physorg, say -- apparently -- neither do journalists.
彼はさらに、一般の大人はインターネット上で情報源をチェックしていないとまで言います。メディア評論家でさえも、 Physorgのライターも含めて、ジャーナリストらと同様に‐‐そうらしい‐‐と言います。

“One problem with the story is that it is not news. According to the University website the experiment was done on 25 students in 2006. … and the information on which the current batch of stories is based is a Pearson press release...”
“この話についての1つの問題は、これはニュース
(訳者注:新たな出来事)ではないということです。大学のウェブサイトによると、実験は2006年に25人で行われていた…そして今話されているこれらの記事は、ピアソンのプレスリリースによるものです。…”

One part of the story that raised eyebrows is some students continued to insist the tree octopus was real even after the researcher told them it was a hoax. But a neurologist explained on his blog Neurologica, this is a well-known phenomenon that also applies to adults.
この話の驚くべき部分は、それはデマだったと研究者に言われた後でも、一部の学生はツリー・オクトパスは本当にいたと主張し続けた事です。しかし神経学者は、これは大人にも適用されるよく知られた現象であると、 彼のブログNeurologicaで説明しました。

“...people will maintain a belief once it is formed (a phenomenon called belief perseverance) even in the face of later disconfirming evidence. In fact, when people are told that the scientific evidence contradicts their beliefs they simply distrust the science...”
“…いったん信念(それは「盲信」とも呼ばれる現象)が形作られると、後にその証拠がうそだと確認されても、人々はその信念を維持するでしょう。事実、人々は科学的な証拠が彼らの信念に矛盾すると言われた時、彼らは単純に科学を疑います。…”


So what do you think? Did journalists screw up the story? Or is Newsy pulling your leg, and the tree octopus really is endangered? Post your research in our comments section.
さて、あなたはどう思いますか?  ジャーナリストが話を間違えてしまったのか? それともNewsyがあなたをからかっているのか、そしてツリー・オクトパスは本当に絶滅寸前なのか? コメント欄にあなたの調査を投稿して下さい。

こうして見てきますと、今回の一件から次の二つの重要な点を伺う事が出来ます。
一つは、ジャーナリストですら子供達と同様に騙されてしまうという事。
二つ目は、一度「盲信」してしまったら、正しい情報まで信じなくなってしまうという事です。

初めの方は今回の報道騒ぎの件についてですが、二点目はこの報道のおかげで再認識された事です。こうしてみると今回の騒動は、色々調べてみるとそこからまた新たな事実が発見されたという点では結果的には良かったという事ですね。
自分達としては、まずは一次情報だけを鵜呑みにするのではなく、その情報の裏づけの有無を確認してみるという作業が何よりも大事なのだという事を、改めて再認識した次第です。