杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

【考察】EMに関するよくある誤解(2)(畜産・養鶏編)

前回は初回という事もあってかなり長くなってしまいましたが、これ以降はなるべく手短にサクサク進めたいと思います。

〔畜産・養鶏編〕

●牛舎や養鶏場にEMなんか撒いても効果はない

いいえ、そんな事はありません。
牛舎や養鶏舎の悪臭には、EMは確かに効果があります。
これはEMの活性液がph3~3.5という酸性溶液である事から、これが糞尿とか腐敗のアルカリ臭を中和する事によって悪臭を抑えると考えられ、これはしごく当然の事と言えます。
もちろんこの消臭効果はEMだけに限った事ではなく、現在では悪臭防止用として様々な資材が販売されており、EMはあくまでその中の一つであるに過ぎません(→参考)。
また、実際に畜産農家での悪臭防止に微生物資材が活用されている事例もあり、例えば香川県の資料では、悪臭防止に「えひめAI(あい)」を用いた例も紹介されています。↓
「畜産公害の発生要因の分析とその対応事例 」(pdf)
EMも同様の微生物資材であり、その発酵液の効果も同様のものであると推察されます。
ただ紹介した事例で興味深いのは、ここでは初め微生物資材として「えひめAI(あい)-2」が用いられましたが、これだけに拘るのではなく、他に別の微生物資材も色々試している点です。
要は、牛舎としては結果的に悪臭が抑えられればそれでいい訳で、その目的のためには別に一つの資材に拘る必要はないという事がこの事例で分かりますし、本来問題を解決するためには、この様に柔軟に考える事が重要なのではないでしょうか。


●EMは鳥インフルエンザ口蹄疫に効果がある

いいえ、そんな事はありません。
鳥インフルエンザ口蹄疫もどちらもウィルスによる感染であり、一度感染が明らかになった場合は、二次感染を防ぐためそれなりの範囲を処分しなければなりません。
よく鳥インフル口蹄疫の時も、EMを与えていたからうちは大丈夫だったなどという宣伝が行われていますが、それはたまたまそこが感染の範囲に入っていなかっただけの事であり、自分の畜舎がその範囲の中であれば、ウィルスに感染していようといまいとすべて殺処分の対象になります。
たとえ自分の所で発症はしていなくても、家畜自体はウィルスの保菌者となっている可能性はあるため、一定の範囲内にいたならばすべて処分される事になります。
つまり、殺処分を免れたのは決してEMのおかげではなく、たまたまその範囲の外であったという事だけで、これをもってEMの効果とする事はかなり苦しく、それはただそう思い込んでいただけという事になります。
もっとも、口蹄疫が流行った当時その真っ只中にいた人にとって、EMが口蹄疫の被害を防いだと考える畜産農家の方は、おそらく誰もいないでしょう。
例えば口蹄疫を無事切り抜けたえびの市の対応についても、あの時農家の方及び自治体の方達は、あらゆる手段を用いて、それこそ死に物狂いで口蹄疫の防止に取り組みました。
そして口蹄疫に効くと言われるものは、たとえその信憑性が疑われるものであっても、とにかくあらゆる方策を試しました(→参照)。
EMはあくまでその中の一つに過ぎず、唯一EMの効果として確認されたのは、殺処分されて埋められた牛達の悪臭防止の効果だけだったのです。


●EMは結界を作る
(参考)
新・夢に生きる第40回 「宮崎県の口蹄疫対策に協力いただいたEMボランティアに対する御礼 」

作りません。
もっとも、EMの原液自体はかなり独特の臭気を発していますから、それを撒いた地面の上にはEMの臭気が漂い、それを鳥や虫達が嫌うという事はあり得ます。
EMのボトルをただ置いただけで作られた「結界」の時は、ひょっとしたら鳥や獣達はそこに何らかの「異質」なものを感じ、警戒するのかもしれません(根拠はありません)。
しかしこの様な事象は、「結界」とは言いません。
そもそも「結界」とは宗教用語であり、こんな言葉を使う時点でEMは科学ではないと、自ら告白している様なものです。



【まとめと考察】

畜産業におけるEMの悪臭防止効果は確かにあります。いやそれこそが、EM唯一最大の効果と言っても過言ではありません。
ただ、この様な目に見えて感じる事が出来る効果が「EMは効く」という評価に繋がり、それをもってEMユーザーは、「何にでも効く」という比嘉さんの言葉を信用する根拠としているふしがあります。
口蹄疫事件が収まった後、当時の山田正彦農水副大臣は比嘉さんに感謝状を贈り、比嘉さんはそれを、あたかもEMによって口蹄疫が収束したと言わんばかりに、EMの宣伝に大いに利用しました。
そしてEMユーザーに対しては、EMの絶対性を殊更アピールする絶好の場として口蹄疫を利用するという事になりましたが、これは決して許されるべき事ではありません。
しかし悪臭防止の効果だけなら微生物資材は他にいくらでもあるし、EMを絶対的な存在として位置づけるにはこの効果だけでは脆弱過ぎる、そんな思いがこういう事例に対して、「波動」や「結界」などというオカルト的な能力を付与する事で、EMの神秘性を高めようとしたのかもしれません。
そしていつの間にか、比嘉さん自身までも自らの言説の虜になってしまった、そんな具合に私には見えてしまうのです。

先にも述べた様に、悪臭防止の効果は別にEMに限る事ではなく、多くの微生物資材にも共通しており、口蹄疫後EMの代わりに「えひめAI(あい)」(現在は「MAIENZA」)が広がった実例もこちらで紹介されています。
この資材は初めから自分で作る事が出来るのですが、決してEMほど大げさな宣伝は打ち出してはおらず、逆にEMは今回の感謝状で大きな自信を得たのか、これ以降比嘉波動理論はどんどん研ぎ澄まされていき、そして他の方面からも注目される事になるのです。
「類は類を呼ぶ」とは、よくぞ言ったものです。

(3)に続く)



(参考)
自ブログより:「比嘉さんの「EMによる口蹄疫対策」に苦言を呈する」
         「口蹄疫でのEMとその呆れた宣伝(前編)」
         「口蹄疫でのEMとその呆れた宣伝(後編)」