杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

モデラー目線で「永遠の0」のメイキングを見てみる

2014年上半期の映画興行ランキングが発表されました。
1位は予想通りダントツで『アナと雪の女王』(260億円~)でしたが、2位に『永遠の0』(87億円)が入りました。
邦画の、それも戦争ものがこれほど上位になったというのは実に画期的な事です(→こちら)。

私もこれまで数多くの邦画戦争映画を見てきましたが、その中でもこの作品は、個人的にはかなりの上位にランクされる良い出来だったと感じています。
この映画の出来を左右するものとして、やはりCGとVFX合成の見事さが挙げられます。
CGで描かれた飛行機、特にレシプロ機などは、ともすると合成ありありの「絵」と見えてしまうのがこれまでの常でしたが、この映画ではその部分はかなりの進歩を見せ、飛行シーンなどは実景との合成の力もあって、中々に実感的な映像として再現されていると感じます。
映画でのゼロ戦初登場シーンなどは、本物の栄11型エンジンの一見頼りなげな独特の唸りの中、これほどまでにゼロ戦が美しく描かれた事はなかった、とも思えるほどの良い出来であったとさえ思っています。

このCGのメイキング映像がYoutubeでも公開されており、実写とのVFX合成などがよく分かって中々興味深いものとなっています。


公開されているのは空母「赤城」のこの航海シーンと真珠湾奇襲当日のゼロ戦の発艦シーンですが、真珠湾を描いた戦争映画は多くありますが、実はこの「赤城」からの発艦シーンを描いた作品はあまり多くはなく、数えるほどしかありません。
具体的には戦時中に作られた「ハワイ・マレー沖海戦」、ハリウッドで作られた「トラ・トラ・トラ」と「パールハーバー」ぐらいのものでそれらはいずれも実写ですが、特撮(CG含む)でこの場面が描かれたのは、実はこの作品が初めてではないかと思います(「太平洋の嵐」でも発艦シーンはありますが、その時の空母は「飛龍」でした)。
このシーンの元となったのは真珠湾奇襲当日に撮られた有名なこの写真ですが、こうして比べてみるとその出来の良さがよく分かります。

 (第二次攻撃隊発艦シーン、機種は97式艦攻)


しかし、ここまで良く出来た映像であればあるほど、どうしてもこんな所が気になってしまうのです。
もう一枚、ゼロ戦が発艦する前に撮られた鮮明な写真がありますが、

艦橋に張り巡らされた防弾ハンモック(「マントレット」)の上部を見比べると、実写ではそれは3本ですが、映画版ではここが4本になっています。

 
勿論このシーンは映画の中ではほんの一瞬であり、本編をただ見ていただけでは多分誰も気付かないだろうし勿論私も気付きませんでしたが、こうしてメイキング映像として紹介された事により、今回初めて発見した次第です。

空母「赤城」については、昔ウォーターラインシリーズでこれが発売された時には早速買ってチャレンジしましたが、当時はまともな資料もなく、参考に出来るのは箱絵とか模型雑誌の特集ぐらいのものでした。
(モデルアート1972年7月号より ↓)
 
そして尚且つ、このマントレット自体をどう表現すればよいか分からず、当時の自分の技量では手に余り、結果この模型は「ツンドク病」の仲間入りとなり、それ以来ずっと封印されてきたという、私にとってはまさに鬼門の部分だったのです。

この作品のVFXについて書かれている記事を見ましたが、それによりますとCGの製作に当たってはかなりの数の資料を参考にしたとあります(→参照)。
しかしそれにも拘らずこの映像とは、「白組」ともあろうものがどういう事なのか? と、つい思ってしまいました。
この作品ではその後のミッドウェー海戦も描かれていますので、ここではそれ用に作った映像を使い回したという可能性も一時は考えてみました。
でもこの公開されているメイキング映像を見ているうち、実はスタッフはこの様な事はすべて承知していて、敢えてこのシーンを公開したのももしかしたら、誰かこれに気付いて指摘してくれないかと狙っていたのかも、などと段々思えてきました。
となるとこんなエントリーを上げた私は、まんまと釣り上げられてしまった事になる訳です。いやはや…ヤッテモウタ。
7月23日にはBDとDVD(特典付き)が発売されますが、この機会に他のメイキング映像もじっくり見てみようかなどと、釣られついでに今はついそんな気になっているところです。

東日本大震災でプラモ棚が崩れ、飾ってあった連合艦隊がほぼ壊滅状態となってしまった中、ずっと閉まいっぱなしであったこれは幸いにも無傷でありました。
(購入時700円)

(挫折した艦橋)


昔と違って今はネットを探せば資料はいくらでも見つかりますし、参考とするモデラー達の見事な製作例も色々アップされています。
それを見る度、数十年越しの重い腰を上げようかという気にさせられますが、まずは肝心のゼロ戦の方を早いとこ仕上げなければと思う今日この頃なのです(^^;)。


(追記)
モデラーの方もエキストラで参加していたのですね。何と羨ましい(→こちら)。