杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

EM討論会に参加する

10月13日、東京都豊島区目白の学習院中・高等科教室において、ジャパンスケプティクス公開討論会「EMについて考える」が開催されました。
かねてより楽しみにしていた企画でもあり、10月の3連休という事もあって半分旅行がてら、4半世紀ぶりに上京してみる事としました。今回はそのレポです。

会場はJR目白駅まん前の学習院大学構内で、ここ初めて訪れましたが、中があまりに広くてしばし迷子状態となり、ようやくたどり着いた所でこんなこじんまりとした案内看板が見つかります。

ここで意見ですが、学校の門の脇には様々な催しの看板が所狭しと並んでおり、当日も他の会場ではとある資格試験などが行われていましたが、せめてもう少し目立つ所に大きな看板を置いて、一般の人達にもアピールする様な方法は取れなかったものかとつい思ってしまいます。
学生の頃は大学祭の催しにも関わった事もあり、その時はいかに客を呼ぶかに心血を注いだものですが、そういう熱気というものが感じられなかったのがちょっと残念な所ではあります。

会場の教室はかなり広く、その中で参加者は40人ほど(詳しく数えた訳ではありません)でちょっと寂しい感がありましたが、ネットでお馴染みの皆さんと直にお会い出来たのは、私にとっては嬉しい限りです。


時間が来てジャパンスケプティクス会長の松田卓也さんからの挨拶があり、いよいよ講演の始まりとなります。


最初の講演は小波秀雄さん、「EMとはなにか その主張を検証する」と銘打った講演が始まります。


講演内容については当初自ブログでも紹介する予定でいましたが、apjさんがツイッターで実況をしてくれてそれがtogetterとして公開されていますので、こちらではその補足として当日撮った写真を公開させていただきます。
どなたか後ほど、togetterの方に写真を貼り付けていただけたらと思います。
(togetterより)
「EM討論会@学習院大学(2013/10/13)」
















2番目の講演は朝日新聞の長野剛さん、青森版でEM批判記事を書き、色々言われた事でも有名なお方で、割とがっしりとした体格で関西弁を駆使し、声の感じはどことなく漫画家の江川達也を思い浮かべてしまいました。
今回はその時の取材の裏話など、中々興味深い話を聞く事ができました。


話の中で、町ぐるみで培養器を購入して町民に無料配布している例が紹介されましたが、この培養器で培養されたものが果たして適正な微生物バランスでいるのかどうかなど、実は誰にも分からないのですね。

(長野さん配布資料より ↓)



3番目の講演は神田外語大学の飯島明子さん、日本ベントス学会員でもあり、仙台の学会では大変お世話になりました。


飯島さんはEMに関しての直接的な批判はまずは避け、まっとうな環境悪化のメカニズム解説から始まります。






そして青潮被害が多発している東京湾の現状も語られます。
貧酸素状態となった海の中で酸素を求めて口をのばす貝達の様子、悲惨な状況です。


諫早湾では以前比嘉さんが内湾の調整池にEMだんごを投げ入れる活動を報告していましたが、こうしてまっとうな環境浄化メカニズムを教えてもらうと、「EMの出る幕はない」という事がよく理解できます。


3人の講演が終わり、そこにニセ科学批判でお馴染みの大阪大学教授、菊池誠さんも加えてのパネルディスカッションとなります。


内容についてはまたtogetterを参照してもらった方が分かりやすいですが、そこではEMが教育に食い込む状況、マスコミ対応、放射能問題等々、すでに様々な分野にEMが入り込んでいる状況が語られます。
またディスカッション後の質疑応答でも多くの意見が噴出し、参加した方々の関心の高さも伺えます。
ただ、今回の講演に参加していて、自分なりにどうしても引っかかりを感じてしまった部分があります。

EM問題について議論を行う事は大いに結構なのですが、議論をすればするほど、それを一体誰に聞かせたいのか? という素朴な疑問が浮かんでくるのです。
今回の講演に参加した人達は、皆以前からEMについて問題意識を持っていた人達ばかりの様ですし、事実私などは、いつもネットだけで会話をしている方々とじかにお会い出来、まるでオフ会の様にも感じたものです。
でもあの講演内容からして、それは本来ならば、議員さんや自治体職員・教師及びマスコミ関係者が聴くべきものではないのかと感じるのです。

今回のEMに限らず、ニセ科学というものが問題と言うのは、それを信じている人が全然問題と思っていないというのが大きな問題である訳で、だから今回の討論会でも、本来なら問題だと思っていない人に多く参加してもらい、実はそれは問題なのだという事を周知させるべきものだったと思うのです。
しかし現実は、別に問題だと思っていない人は当然議論なんかは不要ですから参加するはずもなく、結果問題意識を持つ人ばかりが参加するものとなりました。
確かに参加者同士では改めて共通の思いが確認されたかもしれませんが、本来ならそれで良しとするだけではなかったはずです。

初めに指摘した様に大々的に宣伝する訳でもなく、ひっそりと行われる秘密会の様な内輪の集まりだけでは、今回の討論会の意義は一体何だったのか、いささか首をひねりたくなる感じにもなります。
せっかくこれほどの会を主催してくれたのですから、この討論会の内容を元に、これから広く問題点を告示していってほしいと、ジャパンスケプティクスにはぜひお願いするものです。


質疑応答もすべて終了して会がお開きとなった時、討論に加わっていた菊池さんが思わず頭を抱えた場面がありました。
菊池さんにとっては問題点はすべて分かっているけれど、それにいかに対処すべきかが頭を悩ませている大きな問題であり、今回の討論会でそれが解決した訳でもなく、問題は問題として依然残ったままなのです。

「みんな声出さなきゃダメなんだよ。」
講演開始前、隣に座った私に彼はぼそっと呟きました。
「それはあなただから出来るんですよ。」
そう私は返したのでした。