杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

【考察】EMに関するよくある誤解(4)(放射能編)~前編~

前回の〔環境編〕のエントリーを挙げてから随分間が空いてしまいました。
実は今回の〔放射線編〕を書きかけてる途中で「EM討論会」に参加したり、その後あちこちに出かけてしまったり日本シリーズに釘付けになったりして、結果こちらの記事をアップするのがすっかり遅くなってしまいました。
さてぼちぼち続きに取り掛かろうとした矢先、今度はこんな記事を目にする事となり、私の悪いクセでついその詳細をあれこれ調べ回ったり、こちらのまとめをじっくり検討したりなどしまして、結局、

思いっきり無駄な時間を過ごしてしまいました!(笑)

さて気を取り直して改めて本題に入ろうと思いましたが、EMによる除染についてはすでに多くの方からの反論が展開されており、素人の私が今更ここでどうこう言う事でもない状況となっていますので、今回はさらっと行こうと思います。

放射能編〕

●EMを撒けば放射能を消す事が出来る

出来ません。おしまい。

ではあまりにもあっけないので、これまで公開されていた反論のいくつかを改めて紹介しておきます。
特に以下のものは比嘉さんの発言をよく検証されていて、また科学的な考証もなされていますので、EMユーザーの方はぜひじっくり読んでいただきたいものです。

・『科学的・論理的な姿勢で原発の廃止を求める原発懐疑派のブログ』より【「EM菌で放射能が除去できる」は真実かデマか】(→こちら
・『岡山博』より【「酵素やEM菌が放射線障害に有効か」――まともな常識の整理――】(→こちら
・togetterより【「EM菌で放射能を除染できる」は完全に誤り】(→こちら

EMを散布して確かに放射線が下がったと主張している方を見かけますが、そういう人達から見たらこれらの言説は到底納得出来ないであろう事は想像にかたくありません。
しかし現実に放射性物質が微生物によって無害化する事はなく、その様に見えるのは何らかの別な要因があるはずなのですが、EMに捕われていると、どうしても他の可能性にまで考えは及ばなくなってくるのです。


●EMなど撒いても除染にはまるで効果はない

いいえ、そうとも言い切れません。
心情的には即「その通りです!」と答えたい所なのですが、「まるで効果がない」とまでは言えないのではないかと思わせる、とある事案があるのです。

平成24年(2012年)10月25日、農研機構(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)が〔土壌中の放射性セシウムを吸着できる民間資材を明らかにするための実証試験〕を実施するための資材を募集しました(→こちら)。
その試験に応募された中から10資材を選び、効果実証試験を行う事としましたが、
その中には、EM研究機構の「EM-1」も含まれていました(→こちら)。↓

しかし試験開始前、なぜかEM研究機構だけが試験を辞退してしまうという事が起こり、結局残った9社の資材を試験する事となったのです。
その試験の結果はこちらの様になったのですが、その報告の中では注目すべき意見が述べられているのです。
試験内容は、放射性物質が含まれた土壌に資材を投入して、セシウムの吸着能力を比較するというもの(→こちら)ですが、プルシアンブルーを除くと、対照資材のゼオライト及びバーミキュライトを超える資材は残念ながらありませんでした(この結果についてはこちらでも紹介されています)。
しかし注目すべき事に、この試験を行った農研機構からは以下の様な報告がなされているのです。


〔資材を何も施用しない場合と比較して、すべての資材でいずれかの添加割合、土壌の種類において有意な効果が認められ、全く吸着能力が認められない資材はありませんでした。

つまり大なり小なり、すべての資材で何らかの効果があったという事が述べられているのです。
ここで私が疑問に思うのは、なぜEM研究機構は突如試験をキャンセルしてしまったのか、という事です。
比嘉さんはEMによる除染の効果をあちこちで宣伝しています。ですから除染に関しては絶対的な自信を持っていたはずです。
それが直前になって突如のキャンセル、この行動に私は疑問を抱かざるを得ません。

土壌中のセシウムはある条件下において酸によって遊離する事が分かっており、通常は粘土質土壌ではセシウムの結合力は強力なため、その抽出には高温処理など特殊な方法が用いられています(→参考)。
しかしそれ以外の土壌、つまりあまり結合力が高くない土壌では、もしかしたらEM活性液ほどのPH溶液でも、土壌からセシウムが遊離するという事がありうるのではないかとも考えられるのです(最もその場合には、新たな問題が生じる訳ですが、これは後ほどの考察で述べます)。
実証試験では、もしかしたらそんなEMの隠された能力が示されたかもしれず、返す返すこのドタキャンが残念でなりません。
今回の実証試験は予め実験内容を知らせた上で募集を図っており、自信があったからこそEM研究機構も当初は応募した訳です。
それが試験開始直前のドタキャン劇、これでは周りから「敵前逃亡」と見られても仕方がありません。

比嘉さんはこちらで「EMは検証は無用である。」と述べています。
(以下引用 ↓)
EMは、そのいずれにも該当せず、科学的検証はまったく必要なく、各試験研究機関もEM研究機構の同意なしには、勝手に試験をして、その効果を判定する権限もありません。
(↑ 引用終わり)
でも今回の試験には、EM研究機構自ら応募していたのですから、それがなぜ直前に辞退という事になってしまったのか、EM関係者の方にはぜひこの件についての意見を伺いたいものだと思います。


初めさらっと行くつもりだったのですがついつい長くなってしまいましたので今回はここまでとし、〔まとめと考察〕は後編で述べる事と致します。

(後編)へ続く