杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

最強の「旅カメラ」を考える (2)

(前回記事はこちら

2014年10月8日、3年ぶりの皆既月食を撮るため、カメラを三脚にセットして本格的に天体写真にチャレンジしてみました。
月が欠け始めた頃までは何とか撮れていましたが、
1/400秒、F5.6、ISO200
 

1/200秒、F6.4、ISO400
 

「赤月」になった途端手動で行っていたピントも不安定となり、こんなピンボケの絵しか撮れなくなりました(シャッター速度、露出、ISO感度はすべてマニュアルで調整、画質が荒くなるのを避けるため、ISO感度は出来るだけ低めに設定しています)。
1秒、F5.6、ISO400
 

何枚か撮った中で唯一ピントがあったのがこの1枚だけで、それでも解像感はかなり落ちています。
1秒、F6.4、ISO400
 

黒に赤という色の組み合わせは、コントラストAFでは色の境が中々識別出来ないのですが、マニュアルでのピント調整でもX-S1のピント合焦システムは最後まで不安定でした。
CANONのデジ一眼を持っている友人はピントなんか簡単に合ってたと言ってましたので、コントラストAFのウィークポイントがここでもろに出た結果となりました。
そして、月が影から出てきた所からはまたピントが合う様になります。
1秒、F7.1、ISO200
 

1秒、F5.6、ISO100
 

1/5秒、F11、ISO100
 

1/80秒、F5.6、ISO100
 
(写真はいずれも1200万画素使用、デジタルズームは使用せず光学域最大の26倍(624ミリ)で撮影し、大きさを合わせるため若干トリミングをしています。)


また動体を撮影していて、コントラストAFの欠点がまともに出たのがこの写真です。
1/1200秒、F5、ISO100
 

この日は曇り空だったため白い機体と空の境目が中々認識出来ず、ピントはよりコントラストが強い手前側に合ってしまいました。
やはりこういう場面などでは、フジのX-T1などで採用されている位相差AFとコントラストAFのハイブリッド方式が欲しいと思う所です。
今回CANONから、「PowerShot G3 X」という1.0型センサー2020万画素、 24~600ミリ25倍ズームというレンズ一体型高倍率ズーム機が発売され、期待してスペックを見てみましたら、このカメラもAF方式は「コントラストAF」だけでした。
勿論最新の画像エンジンを搭載してますからそれなりに合焦速度は速いものと思われますが、作例の様な被写体に対して果たしてどこまでピントが追従してくれるのか、ちょっと疑問に思っています。
 
またカメラ屋でも実際に触ってみましたが、ついいつものクセでズームのつもりでレンズリング(キャノンでは「スムーズリング」と称してます)を回してしまいましたが、このカメラはここを回してもズーム操作は行えないのです。
パナソニックの「FZ1000」のマニュアルリングではズーム操作が出来るのですが、キャノンの「G3 X」のズーム操作はシャッター部のズームレバーだけで、あの形でシャッター部の電動ズームしか使えないというのは、個人的にはどうしても違和感が残ります(まあ「慣れ」にもよるのでしょうが)。

X-S1での撮影時に他に不便を感じる所として、NDフィルターが内臓されてないというのもまたマイナスポイントとなっています。
それなら外付けのNDフィルターを取り付ければと思っても、自分が必要とするのは動体を撮る時のこういうシチュエーションなのです。
1/200秒(シャッター速度優先)、F8、ISO100
 

ヘリを撮影する時は、ローターが回転している様を写したいので敢えて遅めのシャッター速度で撮りたいのですが、快晴の空では絞りはF8以上に暗くはならず、ISO感度も100以下にはならず、オートで撮るとシャッター速度はかなり速くなってしまい、結果ローターは止まってる様に写ってしまうのです。
作例のヘリはOH-6Dで、ローターの回転数はやや速いため1/200秒でもぎりぎり回転している様に写りましたが、大型のヘリではこうはいかずもっと遅いシャッタースピードが要求されます。
しかしこれ以上シャッター速度を遅くしてしまうと露出オーバーとなってしまい、X-S1ではそうなった場合露出オーバーになって写るのではなく、何とシャッターが切れなくなってしまうのです。
この様に次々と被写体が変わる状況の中で、一場面だけ敢えてスローシャッターを使いたい時などに、ワンタッチでNDフィルターが掛けられる仕様が欲しくなる訳です。

また、ボディはいくら一眼並みと言っても、やはり大き過ぎます。
キャノンの「EOS Kiss X8i」ほどではないにせよ、せめてフジのX-T1並みにコンパクト化してもらいたいものです。
操作系についても、X-S1は背面ボタンがあまりにも多過ぎ、再生・消去の操作をするにも左手を使わなければなりません。
 
これなども片手親指で操作出来るのがベストであって、天面や操作ダイヤル部分などは、現行フジX-T10の様になれば理想的だと思います。
  

センサーサイズに関しては、この2/3型センサーとフジノンレンズとの相性がベストマッチングとなっているのですから、無理をして1型にアップしなくとも現在のセンサーサイズで充分だと思いますし、それよりはパナソニックでやがて発売となる「LUMIX FZ300」の様に、4Kフォト対応としたり動画フォーマットをMP4やAVCHDにするなど、各所をより使いやすくブラッシュアップした仕様が望まれます。
 

そして旅カメラとして絶対はずせない機能は、何と言ってもGPSでしょう。
旅の楽しみというのは、旅行後にまた見直すという事も楽しみの一つであり、それにはGPS機能がかかせません。
最近は「Wi-Fi」機能を付けたカメラは増えましたが、これはあくまでスマホとの連携を前提にしたものです。
私はスマホを持っておりません! w
それに撮影する時はやはり撮影のみに専念したいもので、後で旅行行程を確認するためにいちいちスマホから位置情報を取得したりなどしていられません。
現在自分はGPSのために「LUMIX TZ40」を使用していますが、このGPS機能には大いに助けられており、旅行後の行程確認をするのに重宝しています。

これは津波被災地を巡ったある日の旅行行程ですが、GPS付きならこの様な形で行程と撮影地点が確認出来ます(使用ソフトはフリーソフトの「JpgMap」)。
 

その時撮った写真を選ぶ時も、この全体画面からすぐ取り出せます。
 

地図上での位置表示、「LUMIX TZ40」のGPSは撮影方向も記録出来ます。
 

写真表示にすればこのように衛星写真から堤防の姿も確認出来、旅行後にこうして三次元的に写真を楽しむ事も出来るのです。
 

これらの事を考慮し最強の旅カメラとしての必須条件を考えてみると、以下の項目が挙げられます。

 ・「高倍率手動ズーム」(20倍以上、動画撮影時に電動に切り替われば尚良し)
 ・「位相差+コントラストのハイブリッドAF」(+強力な手ぶれ補正)
 ・「高精細EVF(望遠撮影には必須)
 ・「チルトorバリアングル背面液晶」(タッチパネルなら尚良し)
 ・「直感的なダイヤル操作」(メニュー操作なしでの設定が理想)
 ・「内蔵NDフィルター(風景撮影でも必要)
 ・「ポップアップ式内臓ストロボ」(ストロボのON・OFF切り替えは手動がベスト)
 ・「コンパクトボディ」(でもホールドグリップはしっかりと)
 ・「B(バルブ)モード」(星空撮影には必須)
 ・「RAW」(あればなお良)
 ・「防塵防滴ボディ」(あくまで理想)
 
そして旅カメラとして最も重要な機能が、

 GPS(+Wi-FiNFC ならより良)

となります。

今の所理想に一番近いカメラとしてはパナソニックの「FZ1000」が候補として挙げられますが、いかんせんこれには「GPS」が付いていません。
というより、近年発売された高倍率ズーム機で「GPS」機能を搭載しているのは、ニコンCOOLPIX P900」ぐらいしかないという有様です。
このP900の撮像素子が1/1.7型でズームが手動電動兼用、そしてEVFがもう少し高精細であったならば、多分現状では最強の旅カメラになるのではと思うのですが、フジびいきの自分としてはどうしても、上記の条件をクリアした旅カメラの決定版として、「X-S2(或いはX-S10?)」の登場を望んでしまうのです。

(参考:高倍率ズーム機レビュー)
・「フジフィルムX-S1」
 http://camera.itmedia.co.jp/dc/articles/1112/15/news013.html

・「ニコンCOOLPIX P900」
 http://camera.itmedia.co.jp/dc/articles/1504/17/news157.html

・「パナソニックFZ1000」
 http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/20140807_661166.html

・「パナソニックFZ300」
 http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20150716_712097.html

・「キャノン PowerShot G3 X」
 http://www.asuka-xp.com/canon-g3x.html

・「ソニー サイバーショットRX10 II 」
 http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20150626_708837.html