杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

ある構図

自然界には様々な植物が存在し、その植物の有効成分から数多くの薬品が作られています。
これはその様な背景の中で繰り広げられた、「あるお話」です。

ある博士が、独自の生薬配合で新たな「胃薬」を発明しました。
当初はあまり注目される事はありませんでしたが、彼はその胃薬を『特別なもの』であるとして、英語名「Exceptional Medicine」、日本名で「胃薬」と「いい薬」をかけて「E薬(いーやく)」と名付けました。
そして彼は「E薬があなたを救う」という宣伝本を出し、そこで「E薬」の万能性を唱えてその本はベストセラーとなり、こうして「E薬」の名は世間に知られる事となります。

初め「E薬」は胸焼けがよく直ると評判でしたが、本の内容に刺激された読者が、試しにぬかみそにE薬を混ぜて発酵させた液体(「E液」)を飲んだ所、それが便秘によく効いたという話が評判になり、やがておりからの健康・自然ブームにも乗り、「E液」作りはボランティアの協力によって、施設や小学校の地域貢献活動で盛んに行われる様になりました。

やがて博士は、「E薬」の万能効果はとある生薬が発する「波動作用」によるものとする理論を打ち出し、「E薬」の愛用者達は博士の話に驚嘆し、「E薬」の万能性をすっかり信じきってしまいました。
そしてその「E薬」の効果をより長く体内に留めたいと願うある愛用者により、「E液」を混ぜたぬかみそを小豆ほどの大きさに丸めて乾燥させ、表面に白カビを生えさせた「E丸(いーがん)」というものが考案されます。

そして健康に良いとして毎食後「E丸」を飲む姿がマスコミでも紹介されると、小学校でも授業の一環として「E丸」作りが推奨され、生徒達の健康のためとして、給食後に「E丸」を飲む学校が全国に広がっていきました。

これがいつしか国会議員の間でも知られる様になり、やがて「E薬」信奉議員の発案で「生薬推進議員連盟」なる会が創設され、与野党問わず「E薬」の効果を信じる議員達が、増え続ける医療費抑制の切り札として、「E薬」の医療現場への導入などが議論される様になります。

こうして「E薬」が広く知られる様になるにつれ、博士の波動理論にはますます磨きがかかり、
「「E薬」の波動が血液中のソマチッドを活性化し、それにより引き起こされる生体内元素転換によって体全体に「結界」が生じ、あらゆる病原菌が寄り付かなくなる!」

「よってワクチンはもう不要!」

「ガン細胞も消滅する!」
とまで言い出す様になります。

ここに来てさすがに医師達も黙ってはいられず、

    「万能薬などはない!」

    「生体内元素転換などありえない!」

    「それはニセ医学である!」

と批判の声をあげ始め、小学校で作られて飲まれている「E丸」の、児童に対する健康面への危険性も訴える自体となります。

すると今度は「E薬」会社の顧問達が、彼らの言葉を真っ向から批判する行動に出る事となります。
曰く、
「誰が「万能」などと言っている!」

「こんなに多く売れている!」

「皆、『胸焼けが直った』と喜んでいる!」

「こんなに効果の報告があるのに、『ニセ薬』などと根拠のない誹謗中傷を繰り返している!」
そして「威力業務妨害」として裁判に訴えるぞと、次々と批判者達に脅しをかける様になります。

この姿に気を良くした発明者の博士は、幻の「E薬」効果にますますのめり込んでいき、ついにこんな事を声高々に唱えてしまう様になったのでした。













     「「E薬」の検証は不要である!」




















     「「E薬」を神様と思いなさい!」





















     「効くまで飲み続けなさい!」


































     「すべて自己責任です!」
















































※(この物語はフィクションです。)


(おまけ)
胸焼けの直し方はこちらを参照。