私自身、前回エントリーでこの様な事を言った建前上、結局あまり気乗りがしないまま付き合ってしまった訳ですが、見ている内に様々な疑問が湧いてきてしまったのでした。
その疑問は主に特集の中身に関してよりも、取材方法そのものに対してのがほとんどでしたので、今回はそんな素朴な疑問を提示するという形で、3月11日の報ステ「甲状腺がん特集」を振り返ってみようと思います。
ただ準備に時間がかかり過ぎてしまったため、今回はプロローグのみとさせていただき、本編はまた後日改めてという事で、なにとぞお許しの程を。
番組のテーマ曲が流れた後、画面には病院の待合室を模したセットが登場し、古舘アナは冒頭こう語ります。
古舘 「私達が今日、一点に絞ってお届けをしたいと思っているテーマに関して、今日厚労大臣がそれに関連する発言をされましたよね。
ちょっとそれを見てください。」
すぐに特集が始まるかと思いきや、まずはプロローグという事で、放送ではこの日行われた塩崎恭久厚生労働大臣へのインタビューが紹介されます(強調は引用者によります)。
記者 「福島県の調査で子供の甲状腺がんが116人見つかっています。このインタビューを受けて、古館アナはこう語ります。
震災の前は100万人に1~3人と言われていましたが、これだけ見つかっている事に関しまして見解をお聞かせ下さい。」
塩崎 「この問題は委員会でもだいぶ取り上げられておりましたが、ご指摘のデータというのは福島県で行った県民健康調査の結果によるものでございます。
福島県における放射線によります健康被害、健康影響の問題につきましては、環境省の所管でございますので、厚労省としての、コメントする立場にはないという風に思います。」
記者 「国民の健康という側面から、厚労省としての見解というのはいかがでしょうか?」
塩崎 「今申し上げた様に、この放射線による健康影響の対応については、環境省が担当という事でございます。」
古舘 「まああの、これは紙に書かれている簡略化された組織図のご説明という風に感じます。インタビューで記者は、『厚労省としての見解』と聞いてます。
まあ私どもが聞きたいなと勝手ながら思っていたのは、やはり厚労大臣としてのご見解・お考えはどうかという事を率直に聞きたかった所であります。」
もちろん省としての見解など今まで出してもいない訳だし、他の所管に対しての意見など勝手に述べる訳にもいきませんから、ここでは大臣の立場としては当然の事ながら、「環境省の所管」と言わざるを得ない訳です。
それを古舘アナは、「『厚労大臣としてのご見解』を聞きたかった」と述べているのですが、それならば初めから率直にそう聞けば良いのであって、それもせずに後になってから、大臣の言葉を「組織図のご説明」などと揶揄するのは果たしていかがなものかと感じます。
これなど普通ならば、「記者の聞き方が悪い」とか「インタビューがヘタ」と評される場面ですし、あの場面では大臣はそう語らざるを得ない事など、古館アナは当にご存知だったのではないのかと思ってしまいます。
或いはわざとあの様な質問をして大臣がそう答える事を知りつつ、「簡略化された組織図」と評して政府の対応に不信感を植え付けるという、計算されたテクニックだったのでしょうか。
そしてそもそもこのインタビュー映像ですが、これ一体何の会見だったのでしょうか?
映像では何の説明もなく、塩崎大臣がどこでどんな場面でこのインタビューに応じているのか、まるで分かりません。
特集が始まる前の僅か2分のプロローグですらこの有様です。
こんな調子で果たしてどんなものが始まるのかと、不安を抱えながら本編を見る事になるのでした。
(続く)
(参考)
(本編が始まる前に、もう一度こちらで予習をしておく事を薦めます。)
・NHK時事公論より「原発事故とがん~福島県民健康調査~」