杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

やはり「震災を思い出して」は要らない

11月22日早朝、突如の揺れとスマホからの緊急地震警報の音に起こされました。
体感的に今回はかなり大きい規模の揺れであるのを感じましたが、揺れが収まるまではそのまま寝床に横になっている他ありませんでした。
揺れが収まったら停電にはなっていないのを確認し、すぐにテレビを点けるとこの様な画面が出ていました(6時2分)。

  

見てる間に津波警報が発令されて画面は突如切り替わり、津波3mの表記に思わず焦ります。

  

そしてアナウンスは、すぐさま津波避難の呼びかけに切り替わります(当日放送を担当していたのは芳川隆一アナウンサー でした)。

津波警報が出されたのは2012年12月7日のM7.3の余震以来で、気象庁津波高さの表記、及びNHK津波警報の報道の仕方が変更されてからは、今回が初めてのケースでした。
前回は「津波!避難!」という表記がなされ、その後これは局内で検証され、「すぐにげて!」など分かりやすいひらがな表記を取り入れる様にしたとNHK NEWS WEBで紹介されてますが(→こちら)、その通りに今回は一目で直感的に理解出来る内容となっていました。

しかしNHKの避難報道の姿勢は、まずは一刻も早く津波から逃げる事を優先させていて、テレビ画面は津波の到達予想時刻ばかりが表示されているばかりで、その反面今回の地震の規模を示す各地の震度が中々表示されず、それについては民放やスマホなどのネット情報を見る他ありませんでした。
 (NHK
  

 (同時刻の民放、東北放送(TBS系))
  

ここの部分はNHKとしては割り切って、あくまで津波避難を優先させる上での決断だったのかも知れませんが、地震の被害状況を推し測る上でも、民放の様にどこかに表示させても良かったのではとも感じます。

しかし、沖合いで津波が観測されたという情報はいち早く画面に表示されました。

  

その後避難の呼びかけは一層強いものとなります(最も、この時は民放でも同様の呼びかけが行われています)。
 (ミヤテレ(日テレ系))
  
 (NHK
  

この間、安倍総理の緊急会見・菅官房長官の会見なども行われ、地元では宮城県のローカル情報も外枠に表記される様になりましたが、各地の震度情報は8時近くになってようやく示されました(スマホや民放を見てる間に自分が見落としていたのかもしれませんが)。

  

ただ今回は、後になって宮城県沿岸が「津波注意報」から「津波警報」に引き上げられるという事態が起こりました。

  

  

これについては今後別な所で検討されるべき問題でもありますが、こちら側の教訓としては、たとえ津波予想が低くてもそれはあくまで予想であるという事で、実際はそれ以上の大きな津波となる事も有り得るという実例が示されたと理解し、何をもってもまずは避難というのが正解というのが実感出来た次第です。

今回のNHK津波報道及び津波避難の呼びかけについては概ね高評価がなされています。
〔産経ニュース〕
2016.11.22 12:50
NHKの緊迫した避難呼びかけ…ツイッターで「教訓が生きた」や「精神的に疲れます」などの声

福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7・4の地震で、NHKは22日、津波警報の発令に伴い「つなみ!にげて!」とひらがなのテロップを津波の到達時間とともに表示した。民放各社も災害報道の特別画面に切り替えて避難を呼びかけた。
 NHKのアナウンサーは「立ち止まったり、海の様子を見に行ったりしないでください」などと力い調子で繰り返した。NHKは、東日本大震災時の報道で「強い調子で避難をするよう求めるべきだったのではないか」などの反省点から災害報道を見直していた。
 これに対しツイッターでは「文字も赤のひらがなで、よかった。私たちは、少しずつ、過去のことを教訓にして改めていくことができる」「今朝のNHKの放送は怖かった。緊急事態にそなえるスイッチがすぐ入った」などと評価する声が上がった。一方、「NHKのアナウンサーのそれは鬼気迫るものすら感じた」「NHKの映像見てると精神的に疲れます」などの意見もあった。
 同局はこの日放送予定だった連続テレビ小説「べっぴんさん」を休止し、23日午前8時に放送を延期した。(WEB編集チーム)

http://www.sankei.com/entertainments/news/161122/ent1611220007-n1.html

〔スポーツ報知〕
2016年11月22日15時18分
安藤優子キャスター、津波警報でNHKアナの「今すぐ逃げて」に「今までと違う」

 体調不良で21日の放送を休み22日の放送で復帰した安藤優子キャスター(58)がフジテレビ系「直撃LIVEグッディ」(月~金曜・後1時45分)で、同日早朝に福島県沖で発生したのM7・3の地震でNHKをつけ「いつも冷静なアナウンサーの方が割合、語気を強めていた。感情を乗せていたのが今までと違った」と感じたと話した。
 安藤キャスターは地震発生後から「NHKをつけたりなんかもしたんですけれど、ザッピングをしながら見ていた」といい、アナウンサーの口調の違いに「感情を乗せていたのが今までと違った」と口にした。
 NHKでは東日本大震災の被害を受け、11年11月に規定を改正し「津波災害の危機感を視聴者により強く伝え、一人でも多くの人に逃げてもらうよう、避難を呼びかける表現を切迫感のある強い口調や命令調、断定調に改めた」(2013年2月「放送研究と調査」)。
 そしてこの日の早朝は、アナウンサーが「今すぐ逃げて下さい。みなさん、東日本大震災を思い出して下さい。命を守るため、今すぐ逃げて下さい」と強い口調で繰り返した。さらにテレビ画面上にはワンセグの小さい画面でも分かりやすいように、赤い帯に白抜きの大きな文字で「すぐにげて!」と子どもでも分かるようにひらがなで表示していた。

http://www.hochi.co.jp/entertainment/20161122-OHT1T50120.html

他にも、
〔@niftyニュース〕
「「すぐにげて!」「つなみ!にげて!」...NHK津波警告、背景には過去の震災からの教訓が」(→こちら
YOMIURI ONLINE
「今すぐ逃げて…NHK、強い口調で視聴者に訴え」(→こちら
等々…。

どこも概ね高評価ですが、それでも自分にはやはり「震災を思い出して」は余計に感じます。
それは以前も指摘しましたが、今や日本人、いや世界中の人にとって、津波と言えばあの震災を思い出さない人はいないだろうという事です。
そして、「すぐ逃げて下さい。」や「出来るだけ高い所へ避難して下さい。」という呼びかけの中にこの文言を入れてしまった途端、それはアナウンサー自身の切なる願いという言葉ではなく、いかにも定型のパターンをただ読み上げているだけという、冷たい印象を自分は持ってしまうのです。
「そんな事分かってるよ。」
「誰に向かって言ってるの?」
と。
中には思い出したくない悲しみを抱いている人もいるのではないのか、ついそんな思いに捕われてしまいます。

そして今回は特に、震源福島県沖です。
途中、福島第2原発で使用済み核燃料貯蔵施設の冷却施設が停止したトラブルも報告されていました。
そんな中でのあの呼びかけです。
NHKとしては津波避難を呼びかけているつもりでしょうが、あの文言がまたいらぬ不安を煽る事にならないか、局の中で気にかけた人は誰もいなかったのでしょうか。

あの言葉は津波だけではなく、様々な人達の個々の辛い思いも呼び起こし、せっかく癒えた傷口をまた開けてしまう事にもなるのではと、私はつい思ってしまうのです。

人命優先を第一に考え、津波表記を分かりやすく変え、より強く避難を促すというNHKの試みと努力は大いに評価したいと思います。
ただ出来うるなら避難の呼びかけは、民放の様にもっと人間味溢れる物言いとした方が切迫感はより伝わりやすくなると思うのですが、公共放送という立場上それは無理な話なのでしょうか。
技術的な側面からも、港の映像は港湾内の部分アップばかりの映像だったり、天気予報でよく利用されるお天気カメラの映像も充分利用出来たか、ローカル各局の映像時間の割り振りなど、現地の人が知りたい情報を果たして充分に提供出来たのか等、検討すべき課題は色々あると思います。

NHKにおきましては、これで満足する事なく常に問題点をあぶり出し、より一層の更なる改善を望むものです。

(参考記事)
自ブログより
NHKの津波報道が変わった(追記あり)
「震災を思い出して」は要らない

こんな記事もありました。
〔NewSphere〕より
「福島沖地震、海外メディアも詳報 避難者のトラウマを心配、NZ地震との関連にも」(→こちら