杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

中央のNHKはいつになったら「被災地の今」を伝えるのか

初めにお断りしておきますが、私はテレビが好きです。
ネットやSNSの普及と共に世間ではテレビ視聴の時間が減っていると聞きますが、それでも自分に限って言うならば、一日の時間の中ではネットよりもテレビを見ている方が多いです。
そして大河ドラマファンであるという事もあり、平均してみれば多分一番多く見ている放送局はNHKです(視聴料も払ってる事ですし)。

また公共放送という事で、個人的にもNHKにはちょくちょく意見申し上げているのですが、全国から寄せられる量も毎月膨大なため、私個人の意見などはいつも「その他大勢」という中に埋没しているというのが実情で、毎度歯がゆい思いでいる所です(自分の要望内容は後ほど最後に)。
「週間みなさまの声」(←クリック)

震災からもうじき6年を迎えますが、前回記事で紹介した通り、被災地の状況というものはたとえお隣の県であったとしても、未だに詳しくは知らされていないという事が分かります。
これはなぜなのでしょうか。
被災地の地元ではほぼ毎日、震災に関する細かな話題やニュースが流されています。
しかしこれらの報道は所詮ローカルという事で、特別大きな話題でもない限り全国版の放送に載るのはまれな事となっています。
その結果、現地の人にとっては自明な事が他の地域の人にはまるで知らされないという、いわゆる「情報の断絶」が生まれ、その事が被災地に対する無理解やら差別にも繋がっていやしないかなどと、自分はそんな疑問を感じています。

NHKは災害報道というものに特化していますが、その背景には公共放送として「国民の命を守る」という使命感の存在があり、ために震災報道のスタイルそのものについても、幾度も試行錯誤が行われてきました。
でも「命を守る」というのは、災害が起きたその時だけではありません。
災害後の復旧や復興の模様を伝える事も、立派に「国民の命を守る」事に繋がるのではないかと思うのです。
東日本大震災後、東北ローカル局や地元県内では数多くの震災関連報道がなされていますが、それらはほとんどが東北限定、或いは各県限定のローカル番組ばかりです。
そして同じ震災被災地におりながら、隣県ではどんなローカル番組が放送されているのかはまるで分からないというのが現状です。

そして時折特別の日に、中央から見た被災地の今が全国向けに放送されるという事が行われてきました。
でもそれらの多くは時間の都合上、数多くの中のほんの一例だけを取り上げる事しか出来ません。
そしてそれだけを見て被災地の現状を語るという事が行われていますが、果たしてそれが「被災地の今」の真実を紹介している事になるのでしょうか。
一部の不幸な事例だけを取り上げ、被災地を未だ悲劇の地として紹介する、それが震災の風化に繋がる、などと、そんな思いで番組作りが行われてはいないでしょうか。

報道の使命とは第一に、当然ですが「正しい情報」を伝える事です。
そして第二の使命としては、それを「あまねく」伝える事だと自分は考えます。
両者ともしごく当たり前の事だと思うのですが、では今現在、果たしてそれがなされているのでしょうか。
私には、「被災地の今」が広く正確に伝えられてるとはとうてい思えません。

福島県の街中は今どうなっているのか。

西日本の人達は分かりますか?

九州地震熊本市は今どうしてるのか。仮設住宅には何名の方がいるのか。

私には全然分かりません。

あの火災で焼け出された糸魚川市の住民は今どう暮らしているのか。行政とのトラブルは何もないのか。

誰か教えて下さい。

特別な日に特別なプログラムを組まずとも、日々被災地の現状を伝えているもの、それこそが地元で流されるローカルニュースというものです。
そしてこれらの情報こそ、その地域だけに留めておくものとせずに、全国で共有されるべきものであると私は思います。

「○○商店が市の補助を受け、今日から再開。」
でも構いません。
「地元スポーツチームが、被災地の小学校を訪問。」
これでも良いのです。
そこには常に現在の、嘘偽りのない「被災地の今」が映し出されているからです。
更にそこには、災害が起きてから街がどの様に復興していくか、行政の対応に問題はないか、その地での復興の手順に見習う事はないかなど、後々他県が参考にするべき事案も数多く含まれているはずです。

そしてこの真実の「被災地の今」を全国ネットで配信出来るのは、日本全国に放送網を持つNHKだけが出来る事ですし、またこれこそ公共放送たるNHKの使命なのではないかと自分も事有るごとにそう語ってきました(→参考)。

災害大国であるこの日本において、今現実に起きているのは「情報の断絶」です。そしてこれこそが、「震災の風化」を生む原因そのものと言えます。
特別な日に、思い出した様に被災地の姿を映されても、見ている側にとっては
「ああ、そんな事もあったな。」
と、どこか遠くの、過去の出来事としてしか受け取れないでしょう。
たとえ今現在の進行形であったとしても。

震災の風化を防ぐには、とにかく日々伝え続けなければならず、たまにしか伝えないのでは意味がないと私は思っています。

しかしもちろん番組には放送枠というものがあり、毎日毎日それのためだけに30分以上もの時間をかけるというのは現実的ではありません。
だから行うのなら、ニュース番組の中に5分ほどのコーナーを設け、東日本大震災の被災地に限らず、大災害を受けた他の地域も加え、毎日どこかの被災地のローカルニュースを流すというならば、特別な取材体制も必要ないし無理なく放送できるはずです。
実際以前は夜9時のニュースでは、各地のローカルニュースを集めた「列島リレーニュース」というコーナーがあった訳だし、ラジオのニュース番組では今も行われている事です。
NHKの東北ローカル局では毎週木曜日、「被災地からの声」という番組が放送されていて、被災者の生の声が毎週届けられています(これも全国版でやってもらいたいものですが)。
ここで紹介されるのはあくまで個人の声ですが、今現在の現地での出来事を紹介しているのがローカルニュースという訳です。

自然災害大国の日本において、どこか遠くの被災地の姿は、明日の我が身かもしれません。
そう意識する上でも災害時の情報ばかりではなく、被災地のその後の姿も国民すべてが共有すべきであるし、地域毎に偏る「情報の格差」を埋めていく事こそ、中央メディアの役割ではないのかと、前記事の社説を読んでしみじみと感じた次第です。

特別な日だけに流される、中央からの目線による、恣意的に編集されたドキュメンタリーなどもう要りません。

自分が見たいのは、被災地で過ごす人々の日常の姿であり、真実の被災地の今」なのです。



(追記)
1月25日、NHK新会長の上田良一氏の就任会見が行われました。
この日のNHKニュースの中で、上田氏はこの様に語りました。

> 記者会見で上田会長は、「公共放送の公正で効率的な業務遂行を常に心がけ、自主・自律を貫き、視聴者から信頼される公共放送としての役割をしっかり果たすという強い決意のもと、職責を誠実に果たしていきたい」と述べました。

> そのうえで「今、時代は放送と通信の融合という、メディア環境が大きく変化する真っただ中にある。こうした時代に、公共メディアとしてサービスやコンテンツをどんな形で提供していくのか、役職員が一体となって議論し、急ぎ定めていく必要がある」と述べました。

遅まきながら、この言葉に期待を寄せたいと思います。


NHKへの意見窓口はこちら。↓
「メールによるご意見・お問い合わせ」

要望:「被災地のローカルニュースを全国ネットで」