杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

NHKの津波報道が変わった(追記あり)

震災からおよそ1年9ヶ月目となる12月7日、午後5時18分に宮城県沖を震源とするM7.3の強い揺れが東北を襲いました。
今まで多くの余震を経験し、その揺れ方にも大分慣れてきたと思っていた自分にしても、今回の揺れにはちょっと肝を冷やしました。
初めは軽い縦揺れがやがて大きな縦揺れとなり、そこに徐々に横揺れが加わってきてそれが長く続き、
「この揺れのパターンは…、」
と、一瞬いやな予感が頭を過ぎります。
おまけに沿岸部には津波警報まで発令され、地元の者にとってはまさに「あの日」を思い起こさせる事態となりました。
幸いにも今回は停電もなく、津波石巻市鮎川で最大1メートルという程度で、これだけで済んだというのが何よりでした。
それでも仙台市では23カ所の避難所で2250人が避難し、沿岸部各所でも大勢の住民がいち早く避難したという事も後でニュースで知りました。
この地震が起きた時は丁度夕方のニュースの時間帯で、各局ともすぐさま地震報道に切り替わり各地の震度や被害状況の報告を始めた訳ですが、津波警報が発令されるや否や、NHKの報道が急に変わったのに驚きました。

その時画面には突如「津波!避難!」という赤帯が大きく表示され、アナウンサーは大きな声で以下の様に警告を発し始めたのです。


午後5時18分頃、東北・関東地方で強い地震がありました。この地震宮城県津波警報が出ています。
到達予想時刻、午後5時40分、予想される津波の高さは1メートルです。

東日本大震災を思い出して下さい。
命を守るため、急いで逃げて下さい。
可能な限り、高い所に逃げて下さい。
近くに高台がなければ、高いビルの上か海岸から遠く離れた所に逃げて下さい。
決して立ち止まったり引き返したりしないで下さい。
周りの人にも、避難を呼びかけながら逃げて下さい。
津波は予想の高さを超える事があります。斜面をかけ上がり、内陸深くまで流れ込む事があります。
そして津波は何度も押し寄せ、急に高くなる事もあります。
情報はラジオやワンセグでも入手できます。急いで逃げて下さい。


そして各地の状況を伝えた後にまた同様の文面が読み上げられますが、今度は「津波は予想の高さを超える事があります。」という仮定の部分が、
津波は予想の高さを超えます
斜面をかけ上がり、内陸深くまで流れ込みます
何度も押し寄せ、急に高くなります
と断定調の文言に変わり、津波到達時間が近づくにつれ、アナウンサーの緊迫度がこちらにもダイレクトに伝わる形になりました。

一方他の民放各社ももちろん津波情報を伝えて避難の呼びかけはしていましたが、NHKほど切羽詰った様なアナウンスではなく、極めて冷静なものでした。
  〔東日本放送テレビ朝日系)〕


もっともこれは全国放送版のニュースですが、日本テレビ系列のミヤギテレビでは、この時間は丁度宮城県のローカル番組「OH! バンデス」の本番中だった事もあり、現地からの報告や実況と共にNHK同様の避難の呼びかけは盛んに行われていました。
  〔ミヤギテレビ日本テレビ系)〕


今回のNHKの避難報道は、以前NHKが3月22日に放送した検証番組で検討されていた避難指示の文言を、初めて本番で使用する事となったものです。



今回の避難誘導の放送については、これを見た人達からの賛否様々な意見があり、これからも多くの検証がなされていくものと思われますが、あの震災を体験した自分から見たら、それは一刻も早く避難をと願う自分の思いとも呼応し、取り合えず人々を避難行動に駆り立てる事には成功したのではないかとも思います。
また、たとえこれが全国放送版であったとしても、この様に現地の人に直接訴える形での放送は、それこそ公共放送としてのNHKの使命なのではないかとも感じた次第です。
「あまりに大げさ過ぎて、やがて狼少年になりはしないか。」という不安の声も一部には聞かれますが、皮肉な事に現地では、先の震災の経験から今回の放送を聞かずとも、大勢の人が自主避難を行いました。
でもだからと言って、このような放送は決して無駄ではありません。
今回の避難報道は、来たるべき南海トラフ地震に対する警告にも十分なり得るし、何より人の命こそ一番失ってはならないものであるという当たり前の事を、改めて再認識するきっかけになった『警告』であると私は理解しました。
ただ今回は、幸か不幸か停電にはならなかったためついテレビばかりに注目してしまい、肝心のラジオ放送を聞き逃してしまいました。
今回の避難報道がラジオではどのように行われたのか、果たして現地の状況をどこまで伝える事が出来たのか、その検証は改めて今一度行われなくてはならないと思います。


その後地元ローカル局NHK仙台からも、全国版では伝えきれない地元密着の細かい情報が放送されました。



この畠山アナですが、彼は昨年までは夜7時のニュースの顔としてお馴染みでしたが、今年度からは仙台に転属となり、現在は地元密着番組「てれまさむね」のメインキャスターとして活躍しています。
番組内ではいつもざっくばらんにしゃべっている畠山さんですが、今回の地震報道では久々に元のニュースアナの顔となっていました。
人々にどのように情報を伝えるべきか、前回の震災報道の反省からNHKでは様々な検討を行った跡が今回の放送で伺えましたが、地元で実際に昨日の余震を体験をした彼こそが、もしかしたら今回、NHKの中で一番貴重な体験をしたのかもしれません。



(つぶやき)
情報カメラが石巻市を映し出した時は思わずドキドキしましたが、何事もなくて本当に良かった…。




(12月19日追記)
呼びかけの仕方があまりにも切羽詰っていたせいか、どうやらNHK内で再検討されるみたいです。
(47NEWSより)
NHK避難呼び掛けの文言再検討 「つらい」の声に

 NHKの石田研一放送総局長は19日の定例記者会見で、今月7日に津波警報が発令された際にアナウンサーが強い口調で避難を呼び掛けたことに対し「つらい」などの意見が寄せられたため、文言やテレビ画面の表示内容について再検討する考えを示した。

 NHKは東日本大震災を教訓に避難の呼び掛け方などを変更。7日に東北・関東地方で起きた震度5弱の地震で「東日本大震災を思い出してください」と切迫した口調で呼び掛け、画面に赤地で白の文字で「津波!避難!」と表示した。

 その後、視聴者から「当時のことを思い出してつらい」「もう少し冷静な呼び掛けを」などの意見が数十件寄せられたという。

2012/12/19 18:59 【共同通信


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