杜の里から

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LUMIX DMC-TZ70は使えるか?

2月になってカメラの祭典CP+2015も開催され、各社からデジカメの新機種が相次いで発売されました。
そのラインナップを見るにつけ、いつかは一眼とは思いつつ先立つものとの兼ね合いもあり、興味の矛先はどうしてもコンパクトデジカメ(コンデジ)の方に向かってしまいます。
今回の新製品の中では、自分としては特にパナソニックの旅カメラ「LUMIX DMC-TZ70(以下TZ70)」に注目しています。
  

自分は前々機種である「LUMIX DMC-TZ40(以下TZ40)」を所有しておりますが、このカメラの一番の問題は、1/2.3型に1810万画素という無謀とも言える画素数を詰め込んだイメージセンサーにあり、おかげでその感度不足による画質低下の問題を以前の記事で指摘する事になった訳です。

このTZ40の後継機として、ズーム倍率が20倍から30倍になり、電子ビューファインダー(EVF)やコントロールリングが搭載されたTZ60が発売されましたが、肝心の心臓部であるイメージセンサーがTZ40と変わらなかったため、このカメラは最初から「問題外」としていました(詳細はこちら)。
しかし今回、TZ60の後継機として登場したTZ70のイメージセンサーは、1/2.3型1810万画素から1/2.3型1210万画素に敢えてスペックダウンしているのです。
そしてその宣伝文句では、
「画素サイズを従来機種TZ60比150%に拡大し、受光感度を高めた12.1M 1/2.3型 高感度MOSセンサーを新採用。ノイズを抑えた高画質と高速での画像処理を実現する」
と堂々と謳われているのです(→こちら)。
自分としてはもうこれだけで拍手を送りたい所ですが、なおかつTZ70では、TZ60の時にはおまけ程度だった電子ビューファインダー(EVF)も、20万ドットから116万ドットへと高精細なものに変更され、AF追従連写も5コマ/秒から約6コマ/秒 になったりと、各所でブラッシュアップが行われています。

自分はコンデジは日常の記録用として利用しており、「気軽さ」という事を重要視しています。
それはデータ量にも言え、実際1800万画素もの写真となると一枚の容量だけで6MB超とかなりのものとなり、調子に乗って撮影してますと小さなメモリーカードなどではすぐ満杯となってしまいます。
それで普段の撮影時には画素数を落とし、3:2映像で10.5M~7Mぐらいで撮影しています。
普通1800万画素と聞けばそれだけ精細な画像が得られると思いがちですが、デジカメ写真の画質を決めるものは画素数ではなく一画素の大きさにあり、比較してみれば光量が多く注がれる晴天での撮影でもその差は歴然と出て来るのです。
普段通りの撮影条件で撮り比べた画像があるので例題として紹介します(クリックで拡大)。

〔撮影LUMIX DMC-TZ40  元データ画素数:4000×2672=10688000(1069万画素)、4.02MB〕

この画像だけ見ればそれなりによく写っていて、普通ならばこれで良しと思えるかもしれません。
では同じ被写体を2/3型1200万画素のカメラで撮ると、こういう絵となります(普段は半分の画素数で撮影しています)。
〔撮影FUJIFILM X-S1 元データ画素数:2816×1864=5249024(525万画素)、1.37MB〕

素数はTZ40の半分程であるにも関わらず、X-S1の画像の方がコントラストも精細感もあり、線路の砂利(バラスト)も両脇の雑草のディテールもよく表現されていて、奥行き感がより感じられる絵となっています(データ量も軽い)。
X-S1の一画素の大きさはTZ40の約3倍、逆にTZ40の画素の大きさはX-S1の1/3ほどで、一画素の光のばらつき加減(色の諧調)はX-S1の6割程度に過ぎず、その分中間色の色数も少なくなって色あい自体の表現力も落ち、結果として写真そのものに精細感がなくなるのです。

それが新発売のTZ70では、画素数が1800万から1200万に少なくなった分一画素の大きさは1.5倍になり、それにより感度も1.5倍、諧調表現は2割ほどアップとなるはずです。
他メーカーのコンデジがどれも相変わらず1/2.3型で1600万~2000万画素という無謀なイメージセンサーを搭載する中、パナソニックのこの英断は大いに評価されるべきもので、この事については辛口でお馴染みの価格.comでも高く評価されています。

後は実写レビューをじっくりと見ていきたい所ですが、ネットなどに掲載されるレビューでは良いところばかりが強調され、ただの宣伝レビューとなっているものが多いのが難点です。
実際自分は以前カシオの「EXLIM ZR1000」を所有していましたが、確かにレビューで謳われている通り操作はサクサクであり、チルト液晶も便利ではあったのですが、実際に使ってみたら大きな欠陥を見つけてしまいました。
このカメラ、画面に太陽を写しこむと赤玉の派手なフレアが発生してしまうのです。
  
これにHDR効果をかけてみると、より一層目立ちます。
  
夕焼け空を狙ってもこの通り。
  

この後「GPS機能」が欲しくて「LUMIX TZ40」に買い換えた訳ですが、このフレアの件も買い替える一因になった事は事実です。
出来ればレビュアーの方達も、晴天という好条件の中だけで撮影するのではなく、曇天や雨天という厳しい条件の中でも試し撮りを行い、こういう致命的な欠陥などはすぐさまメーカーに報告するなど、問題点は初期の段階で洗い出してほしいと思うものです。

今回のTZ70については、感度アップしたイメージセンサーとヴィーナスエンジンとの相性などの詳しいレビューを待ちたい所で、自分も早くこの手に取って試したいと思うほど基本性能については期待しています。
しかしながら、旅カメラとして必須であるGPS機能が、今回省略されてしまったのが残念でなりません。
一方、ニコンで発売されたクールピクスS9900 にはバリアングル液晶とGPSが装備されていてこちらにも大きな魅力を感じますが、中身はあいも変わらず1/2.3型1600万画素のイメージセンサーであり、それに30倍という高倍率でありながらビューファインダーがないというのが大きな弱点となっています。

理想の旅カメラとしては、LUMIX TZ70とCOOLPIX S9900のいいとこ取りしたものがベストなのですが、中々自分の思い通りにはいかないものです。