杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

誰が風評を広げるのか?

福島第一原発の処理水放流が近づくにつれ、国内では漁業団体が放出反対を表明したり、お隣韓国では反日勢力による「汚染水怪談」によって塩の買い占めが起こったりと様々な動きが起きています。

6月22日には全国漁業協同組合連合会(全漁連)が政府に対して改めて放出反対の決議文を提出して「処理水を流されれば死活問題だ」と訴えた報道がありましたが、福島民友の記事によりますとその最後に、

(引用 ↓)

 坂本会長は会談後、報道陣の取材に対し、放出が始まった場合の対応について「反対とはいえ、(抗議など)何か行動を起こせば自分たちが風評を起こすことにもなりかねない。慎重に考えたい」と述べた。

とありました。

これを見ても漁業者達の一番の懸念は「風評」にあるのであって、処理水が危険であるからと訴えている訳ではない事が分かります。

 

風評の元は「漠然とした不安感」です。

この不安感の元はトリチウムそのものへの不安にある訳ですが、その割にその安全性に関する「科学的議論」のマスコミ報道は圧倒的に少ないと僕は感じています。

処理水放出について今現在マスコミで報道されるのは、漁業者達の反対表明や市民デモの映像、処理施設が完成したという現状報告、処理手順の解説、そんなものばかりです。

でも国民が本当に知りたい事、放出される処理水が果たして本当に安全であるのかないのか、そんな根本的な議論についての報道がほとんどない所に漠たる不安が生じ、それが反対デモに繋がり、やがてそれが風評を生んでいくのではないのか、そんな思いを抱いています。
不安報道はするけど安全報道はしないマスコミ、そんないつもの様なマスコミの態度もまた不安感を増長させている一因になってはいないか、などと感じてしまいます。

 

この漠とした不安を取り払うため、国と東電は今まで何をしてきたのでしょうか?

漁業者との対話集会でも、国は漁業者達の不安を取り除く具体策を示す事なく、ただ
「風評対策・安全対策を徹底する、これからも理解を求めていく。」
と諭す姿が報道されているだけです。

福島隣県の宮城・茨城両県に説明に来たのもようやく今年、放出決定から2年が経った2023年の6月10日になってやっとという有様ですから、漁業者達から改めて放出反対の意見が出るのも当たり前、これで国を信じろという方がどだい無理な話というものです(→こちら)。

 

国への不信感、これも風評の元の一つです。

この国への不信感とトリチウムへの不安感が煽られる事によって、やがて「風評」が生み出されていく訳です。


その良い例がお隣韓国で、ここでは反日野党が処理水の事を汚染水どころか「核排水」とまで言い出し、与党・政府を攻撃する批判材料として用いています。
そのおかげでまだ放流が行われていないのにも関わらず、韓国国内では塩の買い占めが起こったり魚の値が下がり刺身も売れなくなったりと、はたから見れば滑稽としか言えない様な状況に陥っている訳ですが、日本国内の漁業者達が恐れているのはまさにこういう事なのです。


この様な事態に陥らぬ様、国はどのような対応をするつもりなのでしょうか。

東電では独自に「処理水ポータルサイト」というサイトを設け、トリチウムというものについて詳しく説明しています。


そして政府も決して何もしていない訳ではなく、経済産業省では特設サイトを設けて情報発信に努めている姿勢を見せています。

実際このサイトを読み込めばトリチウムについてかなりの情報は得られますが、果たして国民の何割の人がここを訪れているでしょうか?

そして政府も東電も、ポータルサイトを開設したからこれで十分と思ってはいないかとも感じてしまいます。
もしそうだとしたら、政府・東電の情報発信はあまりにも少ないし国民との直接対話がなおざりにされていると言わざるを得ません。

トリチウムの正しい知識を国民に周知徹底させようとする姿勢がこれまでの政府の動きからはまるで感じられないし、そもそもこのポータルサイト内の情報が国民の間に行き届いていたら、少なくともこんな「汚染水を海に流すな」などというデモは起きないはずです(→朝日新聞記事)。

それとも反対デモ参加者の人達は、政府や東電のこのポータルサイトなど全然見ていないのでしょうか?


韓国ではあまりに行き過ぎる不安煽りに対しとうとう科学者達が声を上げ、その様子は韓国内でも大きな話題になりました。

この番組の中で韓国の原子力専門家チョン・ボムジン教授はこう述べています。

(以下引用、強調は引用者による)

「福島で放流される予定の量はその地域から2-3キロ離れれば韓国の川の水と同じレベルに下がるので、韓国に放射線の影響が出るなど想像もできない」

「また福島に保管されているトリチウムの総量は3グラムにもならない。韓国の東海に雨水で落下するトリチウムの量は5グラムだ。福島で3グラムを一度に全て排出したとしても、韓国で雨を通じて落ちてくる量のごく一部のレベルだ。その量が韓国の海洋生物に放射線の影響を及ぼすなどあり得ない」

と、具体的な数字を挙げて放射線の影響などない事を堂々と述べてくれています。
しかし日本の科学界からその様な意見が表明されるのを僕は聞いた事がありません。


わが国には日本学術会議という頭脳集団が存在しているはずですが、処理水についてここから何らかの意見が表明されたという事を、僕は何も聞いていません。

学術会議には放射線原子力の専門家はいないのか、或いは処理水問題など検討するに値しないとでもいうのか、そんな思いを抱いてしまいます。

 

たまに見る科学者(と称する人)の意見でも、ただひたすらに放射線の不安を掻き立てるものばかりでしたが、この事についても先の記事の中でチョン教授はこう述べていました。

チュ氏が「日本の科学者の中にも『汚染水は危険』という見解を示す人もいる」と指摘すると、チョン教授は
量について語らないでトリチウムプルトニウムそのものがいかに危険かという話ばかりする科学者もいるが、そんな話はすべきでない
と付け加えた。

韓国の人に言われてしまいました(笑)。

確かに国内で「トリチウムの影響はあるかないか分からない」などと言って不安を煽る科学者(と称する人)がおりますが、その人達も実は皆知っているのですね。
トリチウムの影響はあるかないか分からないほど小さい。」
という事を。


処理水の排出基準について東電のポータルサイトでは、

放出水のトリチウムの濃度は、放出前のトリチウム濃度と希釈水量で評価し、1,500ベクレル/リットル未満とします。
この濃度は、国の安全規制の基準※(告示濃度限度)である60,000ベクレル/リットルおよび世界保健機関(WHO) の飲料水水質ガイドラインである10,000ベクレル/リットルを十分下回ります

と説明しています。

東電がこの基準通りに放出するのならば、先のチョン教授の説から導かれた僕の見解では処理水は「ただの水です。
ただの水ですから当然環境に影響がある訳もなく、周辺で捕れた魚も僕は今まで通り普通に食します(メヒカリも大好きですが、現在は金華サバがお気に入りとなっております)。

もし出来るならばトリチウム濃度検査の際、処理水の飲料水水質検査も同時に行ってみるのもありかもしれません。


国内で反対デモの映像を見てると時々、デモ参加者達が「処理水」の事を「汚染水」と呼んでいる事があり、それがずっと気になっています。
僕はこの【「処理水」の「汚染水」呼ばわり】こそ風評の元凶であると考えており、それは韓国の状況を見ても明らかです。

ただの水を「汚染水」と呼ぶのは明らかにデマ行為であり、それによって漁業者に損害が生じた場合、漁業者はただ国に損害を補償する様要求するばかりではなく、デマを広めたものに対し「信用毀損罪」とか「偽計業務妨害罪」で訴えても良いと僕は思います。↓

実際韓国の漁業団体が恐怖を煽るばかりの教授を名誉棄損で告発しています。

日本の漁業団体も、ただ政府に風評被害の補償を求めるばかりではなく、いわれなき誹謗中傷に対しては毅然とした対応をとる事を望むものです。

 

日本の海岸周辺や河川の傍には、家庭から排出される下水を処理する下水処理場が数多く存在しています。
そこでは沈殿や活性汚泥を利用した「高度処理」が行われ、その処理水が河川に再び放流されています。

 

「汚染水」を掲げて反対デモを行う人達は結局、この下水処理場に向かって

「この施設は下水を流している! 海を汚すな!」

と叫んでいるのと同じ事なのだという事に、いつになったら気付くのかと僕はずっと思っているのです。